第九話:紫と紅の決着への道筋 榴華が紫電を這わせた時、雛罌粟の結界が一つ壊れる。雛罌粟の結界は強固だが、それでも幾重にも張り巡らせないと榴華の攻撃を防げないほどに紫電は強かった。その時、紫電全てを包み込むように蔓が突如として現れる。一瞬、梓が現れたかと榴華は危惧したが――それ以上に危惧する相手がそこにはいた。 林檎を齧り悠然と夢現の屋根に座る人物。水色の髪を靡かせながら紫色の瞳は何処となく眠たそうだ。水波瑞が危惧した人物であり、榴華自身一度刃を交え――そして、実力を肌で感じた人物水霧双海だ。 「何故、お前が此処にいる」 「んー最初から結末が来るまで見届けようと思ったけど、互角だし長引きそうだから手助け? 怜都が銀色についている間は、銀色の味方であり、故に雛罌粟の味方でもあるから」 怜都が銀色についている間は味方、それは怜都が銀色以外の選択肢を選べば簡単に敵にも味方にもなる、味方と呼ぶには危うすぎる存在。 「……」 「邪魔だった?」 無言だった榴華への問いではなく、雛罌粟へ視線を向ける。 「邪魔とは言わぬ」 「雛罌粟は戦線離脱すれば? 確かに雛罌粟は強いけど、雛罌粟が得意なのは結界何だから」 「それはそうじゃが、あまり我のことを知った風に言うではない。お主との付き合いはまだ浅いのじゃからの」 「そりゃ、そうだけど。余計なお節介と思われても構わないけどね、でもやっぱり――」 「なんじゃ」 「いいや、何でもない」 双海には思惑があった。その為、雛罌粟にはこの場で死んでほしくなかった。雛罌粟が負けるとは思っていないが、それでも対策は最初から練っておきたかった。そうすることで、雛罌粟が殺されるのを防げる。 「はっきりせぬか」 「そうだねぇ……はっきりいうとしたら今この場で二人が死ぬのは頂けない」 双海が断定するのと同時に、茎が榴華と雛罌粟を絡め取るように現れた。咄嗟のことで――二人は反応出来ない。それと同時に榴華は驚愕するよりほか、なかった。 自分だけならまだしもだ、雛罌粟は結界を幾重にも張り巡らして攻撃を防いでいる。それなのに茎は結界が最初から存在しないように、突如現れたのだ。 「どいうことだ? ヒナの結界を破ったのか」 お前は何者だ、榴華の口からそう言葉が漏れているように双海には聞こえた。 「結界ね、例えそこに結界があったとしても――意味はないことなんだよ。現実とは交わり、そして現実とは混じらないから」 榴華は紫電で茎を焼き払う。その際、自身の服も焦げたし、紫電を身体に食らってしまったがそんなことは些細な問題でしかなかった。何せ目の前には得体のしれない人物がいるのだから。 「幻とは、幻でありながら現実として映り、けれど現実にはなれない物ってことだ」 「益々意味がわからないな。ヒナはともかく、俺が死ぬのは頂けないというのはどういうことだ?」 「主力戦力は残しておきたいって話」 「俺がお前の希望を聞く義理はない」 「……そう、残念」 榴華を無数の花弁が襲う。視界が花弁で覆い隠される瞬間、紫電が全てを焼き払い視界を作る。 視界が出来た時、そこには光の剣が無数に襲いかかってくる。急いで回避行動を取った先に――何もなかったはずの場所にまで光の剣が存在していた。榴華は紫電を纏い、跳躍する。 [*前] | [次#] TOP |