零の旋律 | ナノ

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「人の感情なぞ、複雑だ。人の感情なぞ、矛盾に満ち溢れておる。だからこそ――気にするではない。どれだけ気にしようともお主と我が敵対している答えは変わらぬのじゃから」
「あぁ、そうだな」

 例えどれだけ答えを求めても答えが変わらないのならそれ以上求める必要はない。人の心は単純で複雑の矛盾だらけの存在なのだから。
 榴華は結界へ直接ダメージを与えるため、足に紫電を纏わせ上空からかかと落としを繰り出す、一重目の結界はあっけなく敗れ、二重三重と続く。しかし四重目では結果にひびこそ入れられたものの雛罌粟までは届かない。榴華の攻撃を雛罌粟は甘く見ていない。最大級の力を誇る結界でガードを続ける。
 複数の結界を同時に展開することで、相手の威力を軽減させる。
 雛罌粟が扇子を振るうと同時に手毬が現れ、手毬は風を纏い榴華へ攻撃を試みる。
 榴華は紫電で手毬を焼き切ると、中から結界を展開する陣が現れる。榴華は素早く紫電を這わせ結界の陣すら破壊させる。

「お主程、攻撃に秀でたものはいないのじゃろうな」

 雛罌粟は呟く。例えば元第三の街支配者であった栞、彼は攻撃に秀でているのではない、殺戮に秀でている。一撃必殺という意味では榴華は栞には及ばない。けれど、単純に攻撃面を見ただけでは栞は榴華に及ばない。二人は何処か似ていると雛罌粟は思う。どちらも望まぬ力を得たが故に、人を殺した、大切な人を守りたいという意思のもとに。そして、それを二人は後悔しない。

「かもしれないな」

 紫電が地を這い地面を破壊する。破壊された地面は宙へ放り出され、落石する。地面が振動し揺れる。

「お主は今でも死にたいと思っているか?」
「いいや。……いや、やっぱり死にたいとは思っているかもしれない、けれどそれは俺の目的を――復讐を達成した後だ、今はまだ死にたくはないし、死ぬつもりはない。その思いは柚霧がいるからじゃない、お前がいたからだ」

 柚霧だけであれば榴華は迷わず死を選んだ、けれど死を選ぼうとした時そこに雛罌粟が現れた。雛罌粟は新たな生きる目的を与えてくれた。だからこそ、今生きて雛罌粟と戦っている。紫電により抉られた大地から砂塵が吹き荒れる。攻撃が最大の防御でもあるなら、防御もまた最大の攻撃であった。
 雛罌粟は扇子を舞うように振るうと無数の風がカマイタチとなり榴華を襲う。榴華は卓越した身体能力を持って、それらを全て交わす。雛罌粟の防御は榴華にとって脅威であっても本来攻撃を得意としない雛罌粟の攻撃は脅威にはなりえなかった。


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