零の旋律 | ナノ

第十一話:夢物語


 沈黙。外の風音がやけにはっきりと聞こえる。彼らは沈黙するしかなかった。
 泉夜の言葉通りだったからだ。どれだけ銀髪や虚のことを知ろうとしても、理解しようとしても――した所で二人の死を認めることはすなわち自分たちも死ぬことに直結している。

「本当に、それしか方法はないのか?」

 沈黙ののち、重たい雰囲気の中で汐は口を開く。
 他の可能性は本当にないのか、可能性は本当に出つくしたのか、汐はそんな思いだった。

「水波、お前なら何か可能性は思い浮かばないのか?」

 そう続ける。天才軍師水波瑞、しかし本人は天才と呼ばれるのを嫌っている。自分は天才などと呼ばれる器ではないし、天才と呼ばれる程の頭脳を持ち合わせているわけではないと。けれど、それでも天才と呼ばれ続けた理由は、知識や思案することをやめず進み続けた結果である。

「そうだねえ、確かに銀髪や虚達がやろうとしていることが一番、死の可能性は高いと思うよ。何せ、様々な死を目指しても彼らは悉く生き続けた。悉く希望を打ち砕かれた、でも」

 でも、の言葉に視線は水波に集中する。
 元情報屋である泉夜も何を水波が思っているのかわからない。情報屋がわかるのは情報だけであって、人の心を推し量ることはできない。だからこそ、どれだけ情報を知りつくしていても予想外のことは常に起こる。

「夢物語を言えば、可能性が零ではないかな。最も限りなく零に近いだけ」
「夢物語?」
「そう、現実性なんてこれっぽっちもない夢物語で空想だよ」

 顔を僅かに傾けて、水波は唇を僅かに吊り上げ意味ありげな笑みを作る。

「一体何だよ、それは」
「別の世界を探すこと」
「はあ?」

 予想外すぎる言葉に、一同は目が点になり固まる。

「だから言ったでしょ、夢物語だって」
「確かに夢物語だが、どうしてそれが?」

 篝火はもっと水波がそう思うに至って理由を知りたかった。知らずにはいられなかった。

「誰だって考えたことはない? 僕らが生きている世界以外にも世界は存在しないのかなって、小さいころとか特に。別の世界に想いを馳せたことはない?」
「まあ……それは、ないわけでもないが」


- 132 -


[*前] | [次#]

TOP


「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -