恐らくは勉強会 学園アルシェイル。当然テストも存在する。 テスト期間に入ると生徒は其々得意分野のみを勉強するか、はたまた何もしないか、それとも万遍なく勉強するか、多岐に別れる。 此処は佳弥の部屋。一人部屋な為、必要な道具(例えばベッドとか)が一人分少なく、広いので集まる場所としては最適だった。 「閖姫、そこの式少し間違っているぞ」 教科書も何も見ないで、冬馬はベッドに座って暇そうにしては、時折勉強している人たちの方を向いて間違いを指摘する。 「あ、本当か?」 「あぁ。そこはRC:144だ」 「サンキュ」 穴埋めの一か所をちらっと見ただけであっさり答えを導き出されると此方のやる気も低下しますよね。 「相変わらず、お前頭いいよなぁ」 「閖姫だって別に勉強しなくても、――勉強の点数が悲惨過ぎてもお前は大丈夫だろう」 「……」 「そんな睨むなよ。わからないことがあったら返答くらいはするから」 そういって冬馬はベッドに横になった。因みに此処は佳弥の部屋ですから、佳弥のベッドの上。冬馬の勉強するやる気は零、むしろマイナスと。 「相変わらずだな、魔学史はお前の右出る者いないってくらい優秀だよなぁ」 十夜が愚痴半分感心半分でペンを器用に回しながらいう。 「昔さんざんやったから、今さらやることがないだけだよ」 皆は知らないけれど(佳弥は除く)冬馬は貴族の出身で幼いころから英才教育を受けさせられていたらしい、だからこそ学園で勉強をする必要は殆どないそうで。 「どんだけだよ、たく……っておい、そこの奈月」 「なにぃ」 「お前は何机に伏して投げ出しているんだ」 奈月はやる気の欠片もない恰好をしていた。 「だって僕、魔学言語嫌いー」 どうやら奈月は苦手科目だからやりたくなくて勉強を放棄していたらしい。相変わらずだこと。 「ナヅっちゃんってさぁ、術者の癖に、術者にとって必要な魔学言語関連苦手とかある意味致命的だよなぁ」 冬馬が苦笑いする。 「展開術式には関係ないもん」 「……前々から思っていたけれどナヅっちゃんって、本来なら他の術と併用する展開術式を、併用しないで単品で使っているのって、他言語を必要としないからか?」 「あたり前じゃん」 「……」 思わず冬馬が黙ってしまうほど、確認をしてそれが正解だった衝撃が大きかった模様。 まぁ私も術系統は詳しくありませんが、展開術式をそれだけで扱う術者は怱々いないし、この学校でも恐らくごく少数しかいませんよ。 「ナヅっちゃん」 冬馬がベッドから起き上がり、奈月の首根っこを掴む。 「へっ、ちょっ何をするの冬馬!?」 「閖姫、ちょっとナヅっちゃんを借りて行く」 「何処へ?」 「俺の部屋に色々ある魔学言語関連の書籍を用いながら勉強を教える」 「行ってらっしゃい」 「ぎゃー」 奈月の抵抗空しく、引きずるようにして冬馬は奈月を誘拐した。 「ゆりきぃー」 扉が閉まる直前、閖姫に助けを求めるような声が聞こえた気がしないでもない。恐らく気のせいでしょう。空耳空耳。今さらながら補足しておくと、部屋の主は現在外出中で部屋には私を含め閖姫、十夜、久遠。 佳弥は確か、夜食を買いに行くとかで買い物に。夜食の単語に冬馬が反応して佳弥に説教をしていたのが記憶に新しい。 「おい、久遠。此処わからねぇんだけど」 「十夜も何時もゲームばかりしていないで少しは勉強すればいいのに」 久遠はあきれ顔をしながら十夜の家庭教師を務めている。眼の隈からは想像がつかないけれど、久遠は成績優秀なので、こうやって試験前は重宝されていたり。 「俺からゲームを奪うことは俺に死ねといっているということか?」 「いや、少しは時間を減らして勉学の時間に……」 「勉学に励むよりも身体を動かしている方が有意義だと思うんだけどなぁ」 会話だけを聞いていたら十夜が馬鹿に思えそうなので一応補足を(別に私としては十夜=馬鹿でも構わないのですが)十夜の成績は普通。可もなく不可もなく、もっとも実技は優秀だけど。成績は冬馬と久遠が飛びぬけているだけで――いえ、佳弥も成績は優秀だったような。 閖姫は平均的に取って、実技科目が飛びぬけていて、奈月は上下差が激しく展開術式に関連は優秀だけど、苦手な言語関連は壊滅的で多分術者ではない閖姫や佳弥、十夜の方が出来る。 「ってかさっきから李真は黙々と勉強しているよな、お前真面目だよなぁ」 「別に真面目ってわけではありませんよ」 私に話がふられたので返事を。 「でも普段からコツコツお前やっているだろ」 「まぁそうですけれど」 私の場合は学園に来る前の環境が環境だったのでこうでもしないと勉強面は追いつけないのですよ。冬馬に家庭教師を大分やって貰ったお蔭で困らなくはなったけど。それでも長年の差は中々埋めるのが難しいものが。 「確か李真の成績って右肩上がりだよな。学園にきた当初は出来る科目と出来ないのが雲泥の差だったんだろ? 奈月より酷く」 「……最初の頃は色々あったんですよ」 「ふーん」 「というか十夜はどうして私の成績を知っているのですか?」 「あぁ、暇つぶしに盗み見した」 よく、ばれなかったな十夜。この学園は多岐にわたる生徒たちで色々な事に秀でた人が集まっているけれど、それは何も生徒に限ったことじゃない。 先生たちもその筋のプロフェッショナルだったり、専門家だったりする。だからこそ、生徒たちを厳しく監視することが可能。そんな監視の中人の成績を盗み見られる勇気があるのは恐らく十夜だけでしょう。怖いもの知らず、というかなんというか。 「暇つぶしに見られる程この学校のセキュリティー甘くないでしょう」 「因みに暇だったから他の奴らの成績も見たけど、冬馬はずば抜けているよなぁ、あんなチャラい外見している癖に」 暇つぶしに他の人のまで見ていたのですか、なんというか抜け目ない。是が十夜じゃなければ悪用されることでしょうね。 「というか、此処で私が、十夜は生徒の成績盗み見ていますって教師に報告したらどうなるか気になりません?」 「絶対止めろ」 残念。面白そうだったのに。そうして恐らくは勉強会が進んでいった。 ▼あとがき 学園なので、当然テスト期間も存在します。冬馬と佳弥はテスト勉強は殆どしない派。 |