同族意識 絡まる糸。蜘蛛巣のように捉えた獲物は逃さない。 もがいてあがくほどの深く絡みついて締め上げる。 透明な雫が頬を伝わり、地面へ落下し消えていく。 月明かりだけが照らす空間の中で、時折反射して見える糸の位置。 だが、絡まったそれらを解くことは出来ない。ただ、締めあげられていくだけ。 宙をぶらつく足。支えてくれる掌が無ければ既に死んでいた所で不思議ではない。 残酷で、けれど生と死の狭間を彷徨うそれは、何処か非現実的な快感をもたらしていた。 それでも死を望んでいるわけではない。 自らの肉体をいくら傷と血で染め上げようとも、死を望んではいない。 かはっと呼吸が漏れる。はっと残酷な笑みが零れる。 「答えろ。生きるか死ぬか選べ」 「君はおかしなことを聞くね。生きるか死ぬか選べ? ――選んでほしいのは自分な癖に」 絡まった糸は解けない。 けれど不思議と言葉は鮮明に紡げる。 「君が何かの間違いで生きてしまったから、その間違いが正しいのか、正しく間違いなのか、真意を求めているのはどうあったって君だ」 彼は何も答えない。 ただ、手のぬくもりだけが生きていることを証明していて、酷く不気味だ。 いっそ冷たければ、いいのに。そう、死人のように。 「間違いだってわかっているのに生き伸びてしまったから、戸惑っているのは君だ。本当はいつか下される審判を待っているんでしょ?」 「……だとしたら何だって言うんだ」 「罪を犯そうとも、贖罪を君は持ってはいない――そんな概念は君に存在していない」 「だからなんだ?」 「けど、そんな君だからこそ他人の命には従わない。それなのに君は仮初の王を求めている。選択して欲しくて、自分で決められないから」 「はっ、そんなことお前に言われるまでもない。自分でわかっている。そう――自分でわかっている癖に、変えようとしないお前と同じだ。誰かと一緒に生き続けることが出来ない癖に、誰かを求めているお前と同じだ」 「なーんだ、君もやっぱりわかっているんだね」 「全く持って反吐が出るほどに異なる癖に、同種だ」 彼が歪に笑った。 求めている癖に、本心では求めていなくて、本心から求めている癖に、求めていない。 歪んだ矛盾 ――それが僕らだ。 「全く持って笑えるね」 『だからいつか崩れるんだ、終わりは何時だって影に潜んでいる』 ▼後書き 李真と奈月は似ているようで似ていない。 求めているものも違う。けれど、同じようにも映る。 それが李真と奈月の関係。本文含めて抽象的ですが……。 もっと分かりやすく出来るように精進しなければ。 |