存在心地 『お前が傍にいてくれる限り、俺はどこまでも堕ちていける』 『君がいるからこそ、私は私を見失わない』 +++ 「俺は――」 掌を眺める。自室にいたくない、李真と同じ空間にいると心が締め付けられる気がする。漠然とした不安が混ざって気がついたら俺は佳弥の部屋にいた。そんな俺に対して佳弥は何時も通り迎えてくれる。 「どうしたのだい?」 「わからない」 何がわからないのか、聡い佳弥はすぐに察してくれた。 「君は、君たちはお互いに殺し殺されたいのじゃないのかい?」 「――かもしれないな」 自嘲する。そんな思いが奥底に存在しているから――殺し殺されたいと思いながら、殺したくもないし殺されたくもないという矛盾を抱え込んで――だから時々漠然とした不安に襲われるのかもしれない。 全く、佳弥は俺自身が気がつきたくないと無意識に避けていることを的確に当てる。 「例え、そうだね……君がどんな結末を選ぼうとも、私は反対しないよ」 「どんな選択をしてもか?」 「勿論だ。どんな道を選んでも、私は君の味方だ。けれどそれは君が君である限り、ではあろうけれどもね」 俺が俺の存在を見失えば、佳弥は味方ではなくて、さらに別の形で――味方以上の形で傍に、一緒にいてくれると言外に告げてくれている。それを俺は知っている。 「有難う」 俺たちの関係は偶々で、俺たちの出会いは必然でしかないけれど、しかしそれは俺にとって幸せなことでしかない。 李真と出会わなければ今の俺がないように、佳弥がいなければ、俺という存在はとうの昔に壊れていただろう。 「何を。今さらだろう? 私は赤ん坊だったころから現在まで君を知っている」 そして俺もお前を知っている――お前の赤ん坊から現在までを。 「君のことは私が知っている。私のことも君が知っている。だから辛くなれば私に話せばいい。今さら恥も何もないだろう『 』」 久々に聞いた俺の本名 「そうだな『 』」 だから俺も彼女の本名を呼んだ。 |