零の旋律 | ナノ

WhiteDay


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この学園は何故か行事ごとに積極的だ。本日はホワイトデー、例えバレンタインデーに本命として渡したとしても義理で返ってくることを彼女たちは知っている。それでも彼女たちはバレンタインデーにチョコを渡していた。
というわけで眼前。

「これは僕からのささやかなお礼だよ。受け取ってくれると嬉しいな」

 佳弥が彼女たち一人一人に手作りのチョコを渡していた。ラッピングまでしっかりしてあって、概算どれくらいかかったのだかは不明だ。
 聞いた話によると、佳弥は料理が出来ないので、冬馬の部屋に押し掛けて冬馬に作り方を教わったらしい。
 女性たちの人気を佳弥と冬馬で二分割――やや佳弥の方が人気だが――している冬馬は当然、バレンタインデーにチョコを山ほど貰っていた。しかし、此処は暴君といったところだろうか、冬馬はホワイトデーのお返しを用意していない。「佳弥のを手伝うなら、ついで冬馬も作って渡せばいいのに」って俺がいったら「俺と佳弥の分を総合して作ったらどんだけになるんだよ、ただでさえ佳弥に料理を教えるという面倒なことをしたんだ、そこまでしていられるか」と一刀両断された。

「久遠。佳弥の光景みていて面白いか……? いや面白いか」
「あぁ。面白い。特に冬馬との違いを比べるとなおさらのことだ」

 閖姫が俺に話しかけてきた。因みに閖姫は佳弥とは規模が違う。閖姫もそこそこもてるが故に、貰った分はすでにお返し終わっているだろう。それとは別に閖姫が所属する料理研究部はこの日のために(念の為言っておくと、バレンタインデーもやっていた)生徒の人数分のクッキーを用意するという偉業をやってのけた。料理研究部前で無料配布中。後で貰いにいかないと。

「そういや奈月知らないか?」
「奈月? 知らないけどどうしたんだ?」
「奈月にホワイトデーを上げようと思ったんだが、さっきから姿が見えなくてな」

 そういって閖姫はラッピング包装がされたそれを俺に見せてくれた。きっと中身は奈月の好物なんだろうな。

「あぁ、久遠お前にはこれやる」

 そういって別のものを俺に手渡してくれた。

「サンキュ。後で料理研究部にいってもらいに行こうと思っていたところだ」
「今いくと人で賑わっていて大変だろうし、付き合いがあるやつのは個別で最初から用意してあるさ」

 そう、閖姫は貰った貰わない関係なく自作お菓子を振舞ってくれるのだ。

「成程。流石人気の料理研究部だ」

 ふと、佳弥に視線を移すと、未だ彼女たちに囲まれていた。当分佳弥のホワイトデー返しは終わらないだろう。それにしても律儀だよな、佳弥は。どっかの誰かさんとは違って。



▼あとがき
一日遅れのホワイトデー。
奈月はホワイトデーとかバレンタインデーが苦手なので、何も見なくて済むように一人ひっそりと過ごします。







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