零の旋律 | ナノ

想像にお任せ


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 冬馬が本日は用があってカナリアの元へは行けなかった。俺一人でも問題はなかったのだが、カナリアという少年に興味を持った佳弥が同伴を申し出たので、佳弥とともにカナリアの元へ向かう。
 奈月も一緒にと思ったが、奈月は何故か学園の外に出ることを嫌っているので、無理強いは出来ないし、誘いすらしなかった。何せカナリアは学園の外で暮らしているのだから。
 カナリアの元へ到着し、自室へ案内してもらうと――佳弥の瞳が見開かれ輝いた。

「可愛いっ!」

 佳弥の第一声。

「あぁ、初めまして、僕は佳弥。閖姫や冬馬の知り合いだよ」
「宜しくです。僕はカナリア」
「宜しく」

 しなやかな動作で手を伸ばし、カナリアと握手をする。佳弥の人見知りをしないフレンドリーな性格は学園外でも有効な模様。

「それにしても、閖姫や冬馬はこんなに可愛い子と秘密裏にあっていたなんて、酷いじゃないか。もっと早くから僕だって出会いたかったよ」
「……いや、外出とか一応規則違反だけど」
「僕が、逐一規則を守ると思っているのかい?」

 さらりとしすぎている。しかもやけに決まったような台詞に何も言えない。普段、冬馬の苦労が少しは理解出来た気がする。

「佳弥……お兄ちゃん?」
「可愛いっ!!」

 本日二度目の可愛い発言とともにカナリアを抱きしめる。カナリアは反応に困って身体を左右に揺らしていた。その反応がさらに可愛いのだが、カナリアは気がついていない。

「ところでカナリア、何故お兄ちゃんの後が疑問系なんだ?」
「なんか、どちらにも見えたから?」
「そこも疑問か」
「うん」

 まぁお兄ちゃんではなく、正確にはお姉ちゃんであり、それをカナリアに教えていいかは俺の判断する所じゃないので放置。

「佳弥、そろそろカナリアを離して上げたらどうだ? カナリアが困っているぞ」
「すまないね」

 佳弥は素直に手を離した。その動作が一々優美すぎる。王子と言われる所以か。

「所で、佳弥お兄ちゃんも何で服が違うの?」
「ん?」

 あぁ、そっか。佳弥には説明し忘れていた

「カナリアは、全員が自分と同じ白いフリフリした服を着ているもんだと思いこんでいるんだよ」

 ので、佳弥に耳打ち。

「成程。しかし、カナリアに限ってはいいことじゃないか、似合っているし」
「説明していなかったけど、カナリアは少女じゃなくて少年だからな」
「その辺は冬馬から既に聞いているよ」

 知っていたのかっ! 知っていてあの態度とは流石学園内で王子様と呼ばれるだけのことは――って関係ないか。

「ねえ、折角だから佳弥お兄ちゃんもこの服きてくれない?」

 箱から取り出したのは――冬馬ように作ったと思われる白のレースがふんだんに使われたフリフリの服だった。冬馬が着る姿を万が一にでもあったら、俺は笑いをこらえることが出来る自信は皆無だ。
 夜空に輝く星よりも眩い光を放ち、カナリアは佳弥を見上げる。
 佳弥としても、恐らく――いや、間違いなく趣味ではなく且つ着ないだろう服に一瞬身体が後に下がったのを俺は見逃さない。しかし、そんな僅かな拒絶に気がつかないカナリアは

「お願い」

 上目遣いで佳弥にお願いする。佳弥は陥落した。
 俺は何故、静止画機を持ってこなかったのだろうかと後悔した。


▼あとがき
静止画機はD×Sの世界での表現で、カメラのような物のことです。
カメラって普通に言うのかな?と悩んだ末に、カメラのような構造をしたやつがある、ということにしよう!と結論に至りました。







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