零の旋律 | ナノ

温もり


 アルシェイル学園の歴史学の授業において、テストが実施されることになった。
 俺としては迷惑すぎる。何せ、久遠のせいでゲームができなくなったのだから。まぁ勉強を教えてくれるのはありがたいんだけどな。

「なぁ、久遠。花札やろうぜ花札」
「勉強しろ」

 現在、俺と久遠の部屋。机に向かって俺は椅子に座り、久遠は隣に立っている。机の上に沢山置かれた本は図書館から借りてきたもの――久遠が勝手に。ちなみに全て久遠は読書済み。俺が読んでくれそうな内容を厳選してきてくれたらしい。

「勉強したって、点数はかわらないし、花札やる方が時間を有効に使える」
「十夜。歴史学はお前の苦手科目なんだから、少しは勉強しておいた方がいい」
「わかった。なら実技テストの勉強をしよう」
「実技テストなら勉強しなくても問題ないし、それは俺じゃなくて閖姫にいえ」
「……わかった、ポーカーをやって相手をだます練習をしよう」
「勉強からまた離れているし、そんな練習は歴史学には関係ない」
「いずれ役に立つ可能性があるものを切り捨てるのか!?」
「いずれの可能性なら、後でも十分。今は歴史学の勉強だ」

 久遠の奴め、俺の案を悉く却下しやがって。まぁこれ以上言い争いをしていても仕方ない、さっさと終わらせて遊ぶに限る。
 それにしても、ゲームなら何時まででも起きていられるのに、勉強をしようって思うと睡魔がやってくる――普段ほとんど寝ない分、こういった時に睡魔って襲ってくるんだな。

「そこ、間違っている。十夜って本当に歴史苦手なんだな」
「俺は身体動かしている方が好きだからな」
「苦手は克服しよう」
「……」
「はい、オレンジジュース」

 喉が渇いてきたなぁと思ったら、丁度いいタイミングで久遠はオレンジジュースを出してくれた。ありがたい。それから小一時間程度勉強した後だろうか、睡魔に負けて、気がつくと俺は寝ていたらしい。

「むぁ……?」

 寝ぼけながら目を覚ますと、机に伏して寝ていたからか、身体が僅か痛い。後で運動して身体をほぐそう。
 深夜なのに身体が温かいと思うと、毛布がかけてあった。久遠が寝ていた俺が風を引かないように毛布をかけてくれたのか。
 気持ちまで温かくなるような気分で、俺は毛布を握り締め頭まで全部被り、もうひと眠りしよう。
 今日は――よく眠れそうだ。








「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -