歪んだカタチ 愛して、僕を愛して、僕を愛せないなら近づくな、僕を愛さないなら――殺すよ 「あはははっ」 笑う。僕は笑う。 「あははははっ」 僕の大切な人。それを陥れようとするなら――そいつは僕の敵だ。 奪われるのはもう二度と御免だ。奪われたくない。ただ僕だけを見ていてほしい――けれど、それが叶わない事を僕は知ってしまっている。知らずに入れたらどれだけいいことか。 「僕はね、僕の大切な人を傷つけようとするなら――許さない」 淡々と、ひたひたと歩きながら告げる。 後ずさりする彼の音。 「なななんで」 怯える声にも恐怖に囚われ身をすくませている姿にも興味はない。 赤き瞳で見下ろすだけ。僕の大切な人を陥れようとするのなら――放置しない。 「なんでって、そんなの簡単でしょ?」 理由がわからない、みたいな表情しないでよ。 ナイフで数度斬りつけただけのことで――。 「君は、僕の大切な人を傷つけようとした、唯の下らない嫉妬心で。気がつかれる前に、気がつく前に僕が始末する」 例えそれが望まれていない事だとしても、真相を知ればより一層傷つくかも知れなくても。 僕は僕の行動を止める事が出来ない、自分を律する事は出来ない。 「まぁ――選択肢を上げようか。君は僕を――愛せる?」 何度も質問する問い。彼に限らず今まで何人にも。 彼の答えをきくまでもない『おかしい』そんな視線で僕を見てくる奴に、用はない。 だったら、僕は――。 「君は必要ない」 ナイフを刺すだけ。ふかぶかと。悲鳴もあげられないように。痛みで気絶しないように。 「あははははははっ、僕にはあの人だけいればいい。他の何もいらない――君はいらない」 狂ったように笑い叫ぶ。此処は誰も来ない。此処には誰も近づかない。 誰も近づけない。結界で覆った空間を看破出来るのはそれこそ、教師陣くらい。 僕を愛して、僕だけを見て、愛さないのに僕に近づくな、近づくなら――殺す |