零の旋律 | ナノ

策士策略


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「ふーん、アルベルズ王国再建をリヴェルア王国は、全面的に協力ねぇ……」

 朝刊を読みながら、アークは呟く。アルベルズ王国――それはアークの記憶にも真新しい出来事だった。

「再建に全面的に協力って言葉だけはいいよな」
「アルベルズ王国の人々の反応は――まぁ心境複雑って所なんだろうな」
「まぁあいつのことだから、悪くすることはまずないから、その辺は問題ないんだろうけど」
「そりゃ、否定はしないけど」
「これで、アルベルズ王国とリヴェルア王国は友好国となりましたとさ、色々な思惑とか陰謀を全て排除したら、の話だけど」
「排除したのが、新聞ってことだろうが……ところで、あえて突っ込まないようにしていたのだが、やっぱ無理だ。なんで此処にいる?」

 視線は、アークと会話をしていた人物に向けられる。リアトリスやカトレアより薄い金髪からは、仄かな甘い香りが漂ってくる。

「リヴェルア王国第二王位継承者シェーリオル・エリト・デルフェニ!」
「リーシェでいいって」

 隣にいる人物――シェーリオル。現在地レインドフ宅。本来ならいるはずのない人物が、いてあたり前のような振舞いでそこにいた。

「で、リーシェ。何故此処にいる?」
「手紙を届けに」
「……おい、王子に手紙配達と頼む策士は今何処にいるんだ」
「勿論王宮」
「……本当に王子を顎で使うんだな」

 百歩譲ってアルベルズ王国の時は、状況が状況だった為と納得も無理矢理出来るが、今回は別だ。顎でこき使っているとしか、アークには思えなかった。

「好きで協力してやっているわけだから、いーんだけどな」
「王子がそれでいいなら」
「まぁ、仕事終わって王宮に戻ったってのに、俺の部屋で、我が物顔でクッキーを食べていた時は、一瞬クッキーを焼くのを止めようかなとは思ったけど」
「結局策士に弱いんじゃねぇかよ。なんか弱みでも握られているのか?」
「まっさか。俺がそう易々と人に弱みを露見させて、それに付け込まれるような真似をするわけがないだろう」
「そりゃそうか」

 シェーリオルの振舞いを見ても、王子とは一見思えないほど飄々として、食えない性格をしている。
 そしてアークはそんなシェーリオルと戦ってみたいと心から思っていた。ラディカルには駄目だと言われたが、戦闘狂を自覚しているアークには、例え相手が王子だろうが関係ない。

「まぁそういうことで」
「……主、主は何時から第二王位継承者とも仲良しになったのですか?」

 そこにヒースリアがやってくる。一目でシェーリオルの正体を見抜き、怪訝そうな顔をする。
 アークは何気なくヒースリアとシェーリオルを交互に見比べる。どちらも人目を惹く整った容貌しているが、リアトリスがいったようにヒースリアは美人でシェーリオルは美形だなと思う。

「ともってなんだ。それはカサネのことを指しているのか?」
「他に何かありましたっけ?」
「……本当に嫌いなんだな」
「何、この……えーと、銀髪の人はカサネ嫌いなの?」
「大嫌いです」

 シェーリオルが興味を持って尋ねる。露骨に嫌な顔をしたヒースリアの事を知らないからだ。

「あぁ。ヒースリア・ルミナス。執事」
「執事の恰好をしていないことは突っ込んでも?」
「多分駄目」
「了解」

 シェーリオルはそれ以降、ヒースリアの恰好を気にした素振りはない。

「で、手紙の内容はなんだ?」
「招待状」
「は?」

 シェーリオルは懐から桜色の封筒に入った手紙を取り出し、アークに渡す。封を切って手紙を取り出し、暫くの間無言で文字を読んでいた。


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