U 「だろ?」 「では、主。私がとっておきのアドバイスをして差し上げますよ。心して聞いて下さい」 「何だ?」 「始末屋であっても、恐怖も畏怖することもない、主が始末屋だという事を知っている最適な人物のことです」 「誰だ?」 「――リアトリスです」 「それだ!」 アークは勢いよく立ちあがり、その勢いのまま――リアトリスの自室へと向かっていった。 その電光石火ともいえる勢いに、ヒースリアはやれやれといった足取りで、結末を見にリアトリスの自室へ向かう。 「こっの馬鹿主! 襲うな!!」 リアトリスの叫び声とともに、扉が勢いおく開き――アーク・レインドフが廊下に尻餅をつく。 仁王のごとく、烈火のごとく、怒ったリアトリスがそこにはいた。 「主、一体何をしたんですか」 到着したヒースリアは、笑いをこらえながら問う。カトレアはこの場にいない所を見ると、花壇にでもいるのだろう。 「こっの馬鹿主ったら、私がベッドの上で寛いでいたら、いきなり襲ってきたんですよ!」 「何してんですか、主」 「もー主に殺されるかと思いましたよー」 「馬鹿じゃないですか主」 「馬鹿ですから仕方ないですよ」 「それはそうでした」 「で、主。寛大な心で聞いて差し上げますから一体何が目的だったんですか?」 両手を腰に当てながらリアトリスは問う。 「見合い写真で結婚相手を探していたんだが中々見つからなくて、そんな時ヒースに、リアトリスなら条件にピッタリ合うと言われてそれだ! ってなったわけだ。というわけでどうだ?」 「何がどうだ! ですか! 誰が引きうけるんですか、そんなもの」 「貴族だぞ、玉の輿だぞ」 「主が相手では嬉しくもなんともありませんよ! というか、ヒース! そんな嬉しくもなんともない余計な入れ知恵を主にしないでください! 私はヒースにも殺意が芽生えますよ?」 視線はぎろりとヒースリアへ向く。 「カトレアを推薦しなかっただけ有難いと思って下さいよ」 「あたり前です! カトレアを推薦したら二人とも微塵切りにして差し上げますよっ」 「といわれるのが目に見えていたので、リアトリスを。いいじゃないですか別に」 「良くないですよ! ヒースは私で楽しんでいますね!?」 「勿論」 さらりと答える全く悪びれた様子のないヒースリアだった。 アークは密かに、結婚相手を見合い写真で探すより――リアトリスの方が知っているしいいなと思い始めるのであった。 それを敏感に察知したリアトリスがその後小一時間にわたってアークとヒースリアに文句を言い続けたのである。一通り文句を言ってリアトリスが満足した頃合い、アークとヒースリアは疲れ果てていた。 本日の始末屋稼業は休業日となった。 [*前] | [次#] TOP |