零の旋律 | ナノ

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「わかっているよ。冗談だけど、シャーロアと比べたらまだありそうだって話さ」
「冗談にしたって寒気がするわ。仕事の邪魔なんかしたら、俺は一瞬であの世いきだよ。くわばらくわばら」
「じゃあ宿でもとるか」
「良い部屋頼む。ってか俺はすでにシャーロアの元まで案内したのだから依頼終了で戻って勝手に服貰ってもいいんじゃねぇのか?」
「最後までいろ」
「何で命令系なんだよ……」

 文句を言いながら、歩きだしたアークにハイリは渋々ついていく。
 普段は安い宿にしか泊まらないハイリだが、アークと行動を共にしている間は高級な宿に泊まれるため、文句は余りなかった。食事もその分豪華だ。
 久々に高級料理につけると思うと、気持もその分高ぶるものがあった。
 最も、仕事中毒であるアークと行動を共にしたいとは余り思っていない。敵味方の区別はつくとはいえ、危険な事には変わりない。第一、自分の身を守れるかすら危うい。 普段一人で行動をしている時ならば、そのような危険と遭遇することは滅多にないが、アークと一緒ならば別だ。危険は格段に上昇する。
 それを承知しながらもアークと行動する自分は危険を認識していないな、と自嘲する。
 交流都市ホクートの繁華街にでて、アークはホクート最大で値段も高いホテルに着き、部屋を二部屋用意する。自室に戻って寛ぐ。薄い光沢があるランプに火をつける。ほの明るさがアークは好きだった。眩しすぎず、暗すぎない光。
 ラケナリアの正体は漠然としていて掴みにくい。けど――シャーロアの実力に間違いがなければ、明日には依頼を遂行できる。夕食を食べる気持ちにならなかったが、ハイリに俺はお前を運ぶ程、力はないと夕食を食べるよう強制的に進められた為、夕食を食べる。
 その後、睡眠もしっかり取れと夕食中、ハイリに念を押された為、ベッドの上に横になりながら眠りへ就く。

 朝方、アークは快適に目覚める。その後すぐにハイリを叩き起こしシャーロアの自宅を訪れる。ハイリはまだ寝ていたかったと、眠そうに目をこする。普段のハイリなら、まだシャーロアも寝ているのではないかと頭が回ったが、寝ぼけている頭ではそこまで思考が出来なかった。時刻は現在七時を過ぎた所。
扉を開けると、シャーロアが既に待っていた。

「大雑把にだけど、ラケナリアの事について判明したよ」

 シャーロアが情報屋であろうとなかろうと、もたらされる情報が有益ならば構わない。
 昨日とは違い椅子が一つ増えていた。アークとハイリは椅子に座る。お茶も用意されていた。

「ラケナリアって、交流都市ホクートに本拠地を構える組織で、組織全体は――約五十人前後。其々がラケナリアを名前として名乗っているけど、それだと組織の面々同士では不便だから、仲間同士で呼ぶ時はラケナリア+コードで呼びあっているみたいだよ」
「ほー」

 適当にアークは相槌を入れる。別段アークには興味の無い情報だった。

「ラケナリアは、まぁ簡単に言えば裏の組織だね」
「本拠地の場所は判明しているのか?」
「うん。本拠地の場所は判明しているよ」
「何処だ?」
「ラケナリアの本拠地は、船だよ」
「船、か。海賊とかみたいなものか?」
「一見すると海賊の外見にすることで一般人に恐怖の印象を植え付けているみたい。船なら移動するにも便利だしね」

 大陸を移動する時に、用いられる移動手段は船だ。人族は魔物を操ることが出来ない為、魔族の用に魔物で移動することは叶わない。


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