V 「んー予想より若くて驚きました?」 「いや、まぁ最初はな。だが別段珍しいことでもないか」 例え子供だからといって油断ならないように、少女だからといって能力が劣っているわけではない。 「そう? 有難う」 少女シャーロアははにかむ。年相応な笑顔は、情報屋を生業としている雰囲気を醸し出さない。 「で、何が欲しいのかな?」 「ラケナスって何だか知っているか?」 「ラケナス? んーラケナスラケナス……」 顎に手を当てて考える。 「ラケナスってのは知らないけれど、ラケナリアってのなら知っているよ」 ラケナリア、ならば違うとハイリは落胆する。噂は所詮噂でしかないと。 「悪かったな、アークいこ……」 「いや待った。ラケナリアについて教えてくれ」 アークの瞳が獲物に食いつくように光る。 「はぁ? お前が探しているのはラケナスじゃないのか?」 「あの男がそもそもラケナスという名称に確信を持っていたわけじゃない。ラケナリアが正しい可能性が充分にある」 「成程な」 曖昧で確証のない名称であれば、それに近い名称の可能性も無きにしも非ず。 ましてや優秀だと噂の情報屋が知らないのであれば。 噂は噂で実際、素人の可能性も未だ残ってはいるが。 「ラケナリアってのは此処最近水面下で現れた組織と人の名称」 「? どういう事だ」 「ラケナリアって全員が全員名乗っているから」 「――成程」 偽名のようなものだろうか。ハイリは会話に口を挟まず考える。今、会話をしているのは依頼人と依頼主であって、ハイリが出る出番ではない。 「ラケナリアが何の目的を持って動いているのか、までは知らないけれど。確か……ラケナリアって自らを名乗っていた二人組がここら辺界隈にいるけど、どうする?」 「……よし、案内を頼めるか?」 「わかった。じゃあ行こうか」 シャーロアが椅子から立ち上がる。それに続いてアークも立ち上がり扉に手をかけ外に出る。 外の日差しが眩しい。時刻は丁度昼を回った頃合い。 「は!?」 とんとん拍子で進む二人の会話に思わずハイリは声を上げた。 「そこの少女が案内するのか!? 場所をきいてお前だけで云った方が懸命じゃないのか?」 「ん、いやだってこいつが情報屋なら場所を知っているだけ、じゃない可能性もあるし一々戻ってくるのは面倒だ」 きっぱりと云い捨てるアークにハイリは不安そうな表情をする。 巻き込まれたらどうするのだろ――と。 そんな心配をよそにシャーロアは悠然とアークの隣に並ぶ。慌ててハイリも後ろをつける。 煉瓦沿いの建物を歩きながらシャーロアはアークとハイリに質問をした。 「是は私個人の質問……というか問いかけなんだけど、私と同じ髪色をした青年って見たことないですか?」 「いいや、ないな」 「俺も」 「有難う……」 アークもハイリも即答する。 即答した理由は簡単だ、シャーロアのような髪の毛を持った人物であれば、一度出会えば忘れない。特に始末屋であるアークはなおさらだ。商売柄、人の顔と名前はよく覚えていた。 シャーロアは僅かな期待しか抱いていないが、それでもいないと言われれば落胆する。 是が何人目に対する質問か覚えていないほど、聞いて回ったことだとしても。 そのうち自然と街外れの方へ移動していく。 「……何だか定番だよなぁ、街外れって」 ハイリは背中に手を当てながらぼそっと呟く。 「定番だからわかりやすくていいだろう」 別に奇想天外を求めているわけではない、とアークが返答する。 「まぁそりゃそうなんだけどよ」 「何でも。街外れの小屋で二人は過ごしているみたいですよ。その小屋は以前、別の人が住んでいたみたいなんですけども、ラケナリアの二人が買い取ったって。最も風の噂ですけども」 「ふーん、まぁ別に細かいとこはどうでもいいんだけどよ」 [*前] | [次#] TOP |