零の旋律 | ナノ

花屋ではない(続:王子贈物)


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 ほかほかとした天気はお昼寝日和。そんな天気の中、カトレアは色とりどりの花が咲き誇る庭に出て水やりをしていた。
 その後ろから双子の姉であるリアトリスが元気よくカトレアに駆けよってくる。土を踏みしめる音がカトレアでも聞きとれた。

「カトレア―! ……あれ?」

 カトレアの元まで近づくと何か違和感を覚え、リアトリスは首を傾げる。カトレアから二歩下がり、じとーと効果音がつきそうな程眺める。

「あ」

 違和感の正体に気が付き、リアトリスは声を上げる。

「花が普段より少ない」

 カトレアの大好きな花だから、普段より咲き誇っている量が少ない事にリアトリスは気がつけた。
 
「お花は、誕生日のプレゼントの贈物としてあげたの」

 カトレアが理由を話す。誕生プレゼントに沢山の花を花が好きな女性に送りたいとアークは依頼を受けた。その為、アークはカトレアにどうするか相談を持ちかけた。アークも世話をするが、もっぱらカトレアが花を手入れしているし、花をカトレアが愛しているからだ。
 カトレアは誕生日に上げるなんて素敵と、二つ返事でOKを出した。

「成程―そうだったんですね。流石、私のカトレア優しい!」

 カトレアを優しく抱きしめる。
 そんな微笑ましい様子を自室の窓から眺める姿が一つ。屋敷の当主であるアーク・レインドフだ。

「レインドフ家は何でも屋じゃねぇぞ」

 ぼそりと呟く。
 カサネ・アザレアが以前一度この屋敷に着た時、花が沢山植えられているのを知り、今回王妃の誕生日に渡すために、非公式にレインドフ家の花を用意して欲しいと頼まれていた。
 結局――依頼主の名前は伏せたまま、ありのままをカトレアに告げた。するとカトレアは素敵なことだから送ろう、と言ったのでカサネ・アザレアの元――王妃の元まで届けたのだが。始末屋としては納得していない。

「そもそも、カサネ・アザレアが誕生日に花を渡すって時点で理解出来ねぇ……」

 そんなある日の日常。


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