零の旋律 | ナノ

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「何故、第二王位継承者シェーリオル様が此処にいる!」

 将軍が声を上げる。様を忘れない辺り、ちゃっかりしていた。此処で下手な無礼を働くわけにはいかない。

「ん? あぁ。酷いよね」
「な。何がですか?」
「一応、俺王子なのに。その王子を顎で使うんだよ、全く」

 酷いよね、と言いつつ、嫌そうな顔一つしていない。苦笑いをしている。
 何が何だかわからない将軍はぽかんと口を開いたまま言葉が出てこない。

「あぁ、こっちの話し気にしないでいいよ」

 柔らかな物腰で話しかけるが、隙は一切見せていない。ローダンセはどうすればいいかわからず固まっている。

「さてと、俺の要件は……いや、俺の要件じゃないか、俺はお使いだし」

 お使いで王子を使うやつは誰だよ、ローダンセは心中で悪態をつく。
 隣に並んでいるだけで、冷や汗が流れてくる錯覚に陥る。
 第二王位継承者シェーリオルは構えていない。上着のポケットに、手を入れているくらいだ。けれどその王子とは思えない程の圧倒的実力を肌で感じる。

「アルベルズ王国さ――今のままの王政じゃ、いられないよね?」

 にっこりと笑う。
 将軍は言葉の先を理解した。
 それと同時に、銃弾が舞う。

「第二王位継承者を亡きものにってか? 酷いね」

 銃弾はシェーリオルまで届かない。見えない壁によって全て妨げられる。

「さて、と。俺は俺の仕事をしますか」

 手で軽く上着を翻し、余裕の笑みを浮かべる。


+++
「ハイエナか?」

 ジギタリスは冷ややかな目でシェーリオルを一瞥した後、此処には用はないと再び歩み始める。程なくしてジギタリスとカイラは広場を後にする。
 ジギタリスとカイラという力を失った軍はドンドン劣勢に追い込まれる。
 今までどんな状況であったとしても最強の軍人と二番手である二人がいれば大丈夫だ、と心の中で縋っていた結果。
 それだけではない、突如として乱入してきたリヴェルア王国第二王位継承者シェーリオルの存在、始末屋アーク・レインドフ。赤髪の少年。魔族の少女。様々な乱入者によって、妨害された。

「おおう、一気に弱腰になったぞ」

 警棒は石ころと違い何度も使用出来た。軍人の間に流れる動揺が彼らの中で迷いとなり隙を生む。

「そうみたいですねぇ」

 リアトリスは呑気に応える。相変わらずアークの隣で傍観を決め込んでいる。
 アークの周りには徐々に軍人が逃げるようにいなくなっていく。
 どんなに人数を割いても傷一つつけられない事実をようやっと認めたのだ。


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