零の旋律 | ナノ

彼らの日常


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 人が足を踏み入れることを拒絶しているかのような雪がやまない森の奥地にひっそりと建つ小屋に、ジギタリスとカイラはいた。

「――荒事からしばらくは退いて、のんびり暮らそうと思ったが、カイラはそれで問題ないか?」
「あぁ。問題ないよ」

 サングラスを木製テーブルの上に置くと、隠れていた金の瞳が露わになる。
 金の瞳は真っすぐ、自分に未来を与えてくれた銀髪の女性を見つめる。

「俺はジギタリスが行く場所ならどこでも行くから」

 アルベルズ王国から離れる時も、カサネたちの依頼を引き受けたときと同じような言葉でカイラはジギタリスに続く。

「そうか。なら、問題ないな」

 窓から見える白銀の世界。
 一面の白が埋めつくしたその場所で彼と彼女は休息をとることにした。
 人の喧騒が離れ、荒事から離れ、静かに。


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 とある小さな町でカルミアは酒場を新しく開いていた。
 策士たちからの依頼は当分引き受けるつもりはなかったので、偽名を使い素性を隠して旧友からは見つからないように、こっそりひっそりと。

「いらっしゃい、何を飲むかしら?」

 肩までで揃えた髪を揺らしながら、新しく入ってきた客へ向かって笑顔を見せる。
 ――酒場を暫く満喫したら、今度は子供と戯れる場所でも作ろうかしら。楽しかったし
 そんなことを考えながら、注文されたカクテルを手際よく作成する。


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 広大な海が一面広がる場所で、海賊船の甲板で少年のような顔をした青年は笑っていた。

「ははっ。まーた海賊になるの失敗したじゃないっすか」

 たどり着いた海賊船は、船長になるどころかなぜか人っ子一人存在しない無人の海賊船だった。

「なんで人族消失事件! みたいな事件発生しているんすか。海のど真ん中で、俺は海賊になりたいだけなのに、まだまだ道のりは長そうだなー全く」

 深呼吸して海の香りを身体へ取り込む。

「仕方ない。次の海賊船を探そう」

 人族が消失した争った痕跡のない不思議な海賊船から、人族を見つけ出すことはできないと素早くラディカルは諦めた。


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