零の旋律 | ナノ

観光の終わり


 翌日は観光地を巡って、様々な名物料理を腹が膨れるほど食べまくった。

「ほはぁ。これは太ってしまいますです」

 イカ飴を頬張り幸せそうな顔をしながらリアトリスは次なる獲物(しょくじ)を探す。

「カトレアは何か食べたいのないのか?」
「甘いものがいいな」
「よし、じゃあケーキとか売っている店に行くか」

 アークが町の住民においしいケーキが食べられる喫茶店を聞く。
「賛成でーす!」


 その翌日は観光名所で記念撮影をしながら一杯騒いだ。
 アルベルズ王国を満喫しつく勢いで、レインドフ家は二週間の休日を余すところなく遊び倒した。
 そして帰宅する日、船に乗り海を眺めながらリアトリスは言う。
 潮風が吹くたびに彼女の三つ編みにしてある金髪が揺れる。

「はうわ。あっという間でした」
「そうだな」

 同じく海を眺めていたアークが返答する。

「主には感想を求めていないですー」
「えっひどい」
「冗談ですよ。あぁ、本当に――楽しかったね、アーク」

 夕焼けを背に、リアトリスが笑う。

「そうだな」

 アークも笑みを返した。

「お姉ちゃんにアーク!」

 室内で休んでいたカトレアが甲板に出てきて、二人の名前を呼ぶ。

「どうしたんですー?」
「リィハがおやつ食べようって。ヒースがお茶を入れて待っていてくれているよ」
「わかったですー」
「今行くよ」
「主のお茶はなさそうですね」
「……そんな予言はいらねぇよ」

 船の中で食べるように持ちこんだお菓子を食べに室内へ戻ると、リアトリスの予言は的中しており、嫌がらせのごとくアークのお茶だけない――ということはなく、人数分用意されていてしかも味も変わらなかったので内心アークは微笑んだ。


- 456 -


[*前] | [次#]

TOP


「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -