零の旋律 | ナノ

始末屋海辺


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 アルベルズ王国の海辺でレインドフ家はくつろぐ。
 水着に着替えたリアトリスとアークは、ビーチバレーを二人でやり、リアトリスが飛んではねて動きまわり容赦なくアークを負かそうとボールを四方八方に打ちまくるのを、アークも受け止めて応じる。

「レディーに対して手加減というものが主にはないのですね!」
「手を抜いてほしいのか!?」
「勝負に手を抜くだなんて、とんだ礼儀知らずです!」
「どっちをとっても罵られるだけじゃねぇか」
「諦めて下さい。それが主の運命なのですから」
「運命まで発展させないでよ!」

 いつもの光景をバックコーラスにしながら、ヒースリアとカトレア、ハイリは海の中に入る。

「冷たいな、流石に」
「リィハ。溺れてもいいですよ。助けませんから」
「……マテ、それ言葉がおかしいぞ」
「いえ、何もおかしくないですけれども」
「お前は俺に死ねと」
「そんな悪魔のような言葉をリィハに向ける冷酷非道な人は一体どこにいるんですか?」
わざとらしく周辺を見渡すヒースリアにハイリはため息をつく。
「あぁ。もちろん、カトレアが溺れたら地の果てまで泳いでも助けますから安心してください」
「ありがとう」

 水着姿を恥ずかしがるように、身体を縮こませているカトレアの頭をヒースリアは撫でようとして手を伸ばした途端、頭上にボールが激突する。

「ってぇ」

 一瞬、素の口調に戻ったのでハイリはカトレアの背後に隠れるように逃げた。海の水が跳ねる。

「ちょっと、リアトリス! いきなりボールをぶつけてくるとはどういう了見ですか!」

 ボールをぶつけた犯人へヒースリアは、ボールを投げ貸しながら叫ぶ。リアトリスが右手でボールを受け取って指先で回転しながらべーと舌を出した。

「人の妹に触れようとした罰に決まっているじゃないですかー!」
「いいじゃないですか、頭に触れるくらい」
「ダメですー! 一ミリたりとも許しません! とぉい!」

 リアトリスが再びボールを投げる。灰色のパーカーがふわりと揺れる。
 ヒースリアはボールを受け取りながら、投げ返す。
 いつの間にかアークをおいて、リアトリスとヒースリア二人のボール合戦が始まっていた。

「……砂の城でも作るかな」

 アークは砂辺に座り、器用に城を作り始めた。
 肌寒くなる時間まで満喫して遊んだあとは、アークが時間をかけて作った城を前に、記念写真を撮った。


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