W アークはアルベルズで一番豪華な宿を予約していた。 庭園が広がり、荘厳な雰囲気が漂うそれは宿というよりも豪邸という言葉が相応しい。 三階建ての建物は、所々薔薇の彫刻がある。玄関から室内に入ると、大理石を敷き詰められた床が白く輝く。 一泊の料金は目玉が飛び出るほど高いのだが、リアトリス曰くあくどい方法で稼いだ金銭と、日頃の仕事で稼いだ分を贅沢に使って二週間予約していた。 受付を済ませて、三階まで螺旋階段を上り、部屋に足を踏み入れる。 「わっふーい!」 リアトリスは靴を脱ぎ棄ててまずは寝室のベッドに飛び込んだ。ふかふかと身体が上下する。 「おい、壊すなよ」 「主じゃないので壊しませ―ん」 「俺は飛び跳ねたりしねぇよ!」 「実は本当にふかふかなのだろうかどうなんだろうと興味を抱いた主が、密かにバクテンをベッドの上でして壊す可能性は二パーセントほどありますですよ!」 「確率すくねぇしやらないよ! ガキか!」 ベッドに沈んでいたリアトリスはがばっと起き上がる。 「では、部屋を探険ですー!」 寝室から飛び出し、広々としたリビングを眺める。太陽の光を室内へ受け入れる大きな窓を開けてみると、ベランダから下が一望出来た。庭園の花々が咲き誇り、池の水がゆらゆら蠢く。 「空気が気持ちいいです―」 背伸びをして新鮮な空気を取り込む。 リビングへ戻る。のびのびと過ごせそうな空間に、椅子が人数分用意されていて、試しに座ってみると弾力があり長時間座っても腰が痛くならなさそうだ。 「これはいいな」 アークが座り心地を確かめて、脳内で椅子を購入する算段をつける。 リビングや寝室の他にも個室や遊戯室があり、部屋の中だけでも一日を満喫出来る設備が整っていた。 「流石、アルベルズ一番の高級宿……だな」 ハイリは凄いと眺める。 ユーエリスときたかったなと思ったところで、彼女の笑顔が浮かぶ。 その笑顔を打ち消すことはせず、生き残ったのだからユーエリスの分も精一杯楽しく生きようと決意した。 だから、ハイリは今回レインドフが旅行すると聞いて断らなかった。旅行なのだから武器は必要ないだろうと重たい杖はレインドフ家に置いてきている。 尤も、約三名は旅行だろうが、観光だろうが、いざという時のために武器は手放せないんだろうなと思う。 「豪華ですーカトレア、満喫しましょうです!」 「うん!」 双子が手を繋ぎながら室内を回る姿をヒースリアは眺める。 椅子に座っていたアークの方を向くと、既にそこにはいなかった。アークの姿を探すと、荷物の中から服をとりだして皺にならないようハンガーにかけていた。 「何処の女ですか」 「お前らもやれ」 「主に任せます」 「主よろしくです―!」 「お願い」 「俺は別に皺になっても構わないぞ」 「はぁ」 ため息をつきながらアークは全員の荷物を集めて、鞄から服をとりだして皺にならないようにしていった。勿論皺になっても構わないといったハイリの分も含めてだ。 「先に昼食を食べてから観光いくぞ」 「了解です―!」 アークは一旦部屋を出て、昼食をお願いする。 程なくして、昼食がリビングの硝子テーブル一面に並べられた。 「おおう!」 リアトリスは美味しそうな料理の数々に目を輝かせる。 「いただきますー」 一通り食べ終わって休憩をしてから、アルベルズの観光にでかけた。 [*前] | [次#] TOP |