零の旋律 | ナノ

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 ラディカルは魔族の街を歩いていると、カルミアの姿を発見した。
 魔族の子供たちに囲まれているようだ。

「オカマおにーさん。一体何があったんすか」
「何度かこの街にやってきた輩を始末していたらいつの間にかこんな感じに」

 カルミアは答える。子供が無邪気に長いカルミアの髪を引っ張っている。集まっている子供たちの瞳からは敵愾心が見えないどころか、目が輝いていた。

「あと、戦い方を教えてもらいたいって。まぁ殺しの技術は教えたくはないけれど、護身用程度なら構わないから、今度教えることにもなっているわ。大人たちの許可はとったことだし」
「……いつの間にか大人気っすね」
「そうでもないわよ。人族から解放されたばかりの魔族とかはまだ、私のことよく思っていないみたいだし」

 そう言いながらもカルミアは気にした素振りを見せていない。

「やっぱり、おにーさんたち皆変すよ」

 アークもヒースリアもリアトリスもカルミアも、出会った人族は変な輩ばかりだとラディカルは笑う。
 物騒な人たちであることは確実なのに、それでも出会えてよかったと思うのは――彼らが変だからだろうか。
 元々人族だから魔族だからと種族の違いを感じる生活区間にいなかったせいもあるのだろう。
 けれど、それだけが原因ではない。例え同じ生活区間にいた所で魔族が嫌いな人族はいたはずだ。
 ならば――やはり彼らが変人なのだ。

「人を変な渾名で呼ぶ貴方も相当変よ」

 カルミアは笑い返した。


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 カサネ・アザレアは一人佇んでいた。異世界エリティスからの侵略を撤退させることが出来る。
 しかし全てが上手くいっているわけではない。
 懸念材料がないわけではない。

「まぁやれるだけのことはやらなければいけませんね。エレテリカが――幸せな生活を送
れるために」

 空を見上げる。この見果てぬ空を突き破り、世界の枠組みを超えた果てに異なる世界が存在するとは最初夢にも思わなかったと、カサネは目を細めた。



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