零の旋律 | ナノ

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「お前ら待て!」

 超特急で治療を終えたアークがヒースリアとリアトリスに追いつく。

「げっ、追いつかれましたです!」
「それよりも主とリアトリス一言いいですか?」
「なんだ?」
「なんです?」
「その血まみれのボロボロな服でカトレアと会うつもりですか?」

 ヒースリアの言葉に、アークとリアトリスは同時に己の服を見る。
 怪我は完治しているが、服にこびれついた血は残ったままだ。
 激しい戦闘を繰り返した結果服もボロボロで破けている。怪我だけ完治しても激戦だったのは誰が見ても一目瞭然だ。
 一方のヒースリアはハイリの治療を早くに終えているので、服を新調しているため汚れ一つないような清潔感あふれる白だった。普段とは少しだけ恰好が違うが優美でその美貌を際立たせる役目を服は果たしている。

「……しまったです。私としたことが……すっかり忘れていました……不覚」

 リアトリスは頭を抱える。

「やべぇ……服のことまで頭が回らなかった」

 破れている事を除けばアークの服はまだ黒と赤が基準なので血がそこまで目立たないが、リアトリスは黒い部分が殆どない服なので赤々と痛々しく血が目立つ。

「というわけでカトレアには私があってきます」

 悪魔のような笑顔でヒースリアが宣言してから去って行った。このままの恰好ではアークもリアトリスもカトレアに会うわけにはいかない。

「主。ヒースリアの服をボロボロにしましょう」
「そうだな。一人占めはよくないよな」
「えぇ」

 利害が一致したアークとリアトリスはヒースリアに獲物を定めて突撃した――新調したばかりの服を汚されたヒースリアは、仲良く三人で魔族から服を新しく新調してからカトレアに会いに行った。

「皆! 無事だったのね。良かった――おかりなさい」
「「「ただいま!」」」

 カトレアが満面の笑顔で迎えてくれたので、全員笑顔で返事をした。



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