零の旋律 | ナノ

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 ヒースリアは汚れた服でいるのが嫌で、丘に戻る前に服を取り換えていた。
 それから丘の上で待機すること一時間。カサネたちが堂々たる足取りで戻ってきた。・
 服の乱れも怪我もしていないところをみると不足の事態は起こらなかったなとヒースリアは判断する。

「お疲れ様っす」

 ラディカルの言葉にえぇとカサネは頷いた。エレテリカはラディカルの姿を見て、安堵したようだ。
 ラディカルの怪我は結局ハイリが治した。『俺が見捨てたようで後味悪いだろ』といって。しかし無料で治療したので、ヒースリアが『じゃあ私のもただですね』と笑顔で脅迫をし始めたので結局誰からも治療費は取れないハイリであった。

「で、どうでしたんです?」

 ヒースリアがカサネに問う。

「私が失敗したと思うのですか?」
「失敗したら腹がねじれる思いで悲しんであげようと思ったんですけど」
「成功したので笑えなくて残念でしたね」
「ちっ」
「舌打ちしないで下さいよ。イ・ラルト帝国は私から出した条件を飲みました。双方この件については後腐れなくは無理でしょうけれど不問です。イ・ラルト帝国は新たに王を作り、そこから国を再建することになりました」
「そんな甘い対応でいいのですか?」
「下手に対応を厳しくすることは争いの種をまき散らすことになります。いいのですよ、是で。それに此方の武力を見せつけることは出来ました。主力を失った彼らが下手に私たちの国を攻め入ろうとしたところで、今回の事を思い出して踏みとどまるはずです。その間にイ・ラルトとは有効な関係を築けるようにエリーシオにでも進言しますよ。これ以上詳しい話をしますか? 例えば」
「あぁもういい。別に政治戦略に関して興味はねぇよ」

 ヒースリアが素の口調に戻りながらめんどくさそうに手を振って仔細を拒絶した。それがわかっているのだろうカサネは微笑んだ。

「さて、戻りますか。リヴェルア王国へ」


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