零の旋律 | ナノ

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 空中からヴィオラに標準を合わせて引き金を引く。魔術を帯びた弾丸は、回転しながら地面へ向けて一直線に落下する。
 ヴィオラは咄嗟に交わすが、烈風の衝撃が身体を切り刻む。風に血飛沫が乗る。

「お前たちは、この世界で終わればよかったんだ」

 口から吐血しながら、ヴィオラは言葉を吐き捨てる。

「終わりたくないから、世界ユリファスを探したんだろ。死にたくないから」
「そんなの」
「過去確かに俺たちの先祖は戦う道を選んだ。けど、それは過去だ。今の俺たちに無関係とは言わないが、俺たちは悪くないだろ! 先祖が選んだものを何故俺たちまで強制される必要がある! お前たちだけ逃げて、悠々自適の生活を送って、それをねたまないわけないだろ、嫉妬しないわけないだろ、俺たちの今の生活と、そっちの生活を比較して、羨望しないわけないだろ。奪ってしまいたくなるのは当然だ」
「……例え、今のお前たちと過去が無関係だったとしても、最終的に武力による侵略を選んだのはお前たちだ」
「なら、お前たちに対して下手に出て俺たちの世界を助けてくださいって言ったらお前たちは許したのかよ」
「――それはないな」

 ヴィオラはレスの魔術師として、世界エリティスでの過去の終わりなき争いを知っている。それを選んだ人族を知ってしまっている。
 だからこそ、それを過去だと言われても記憶がある以上ヴヴィオラにとってそれは過去として流せるものではなかった。

「だろ? そうなることがわかっていたんだ。なら選択肢は武力で奪う、一つだけだろ。俺たちはそれを選んだ。それにしか――ないだろ」

 ヴァイオレットたちエリティスの民はわかっていた。レス一族が――魔族が、ユリファスの人族が、自分たちの存在を歓迎することはないと。共存を受け入れてくれることはないと。
 わかっていたからこそ、対話は無断な手段と切り捨て武力で押し切ることにした。数百年の歳月をかけて。

「……そうだな」

 他が対話を受け入れたかもしれなくても、ヴィオラは対話を受け入れなかった。
 エリティスが許せないから、裏で暗躍して対話を破壊したかもしれない。
 自身の頭が固くて、融通がきかなくて――馬鹿な結果がこれなのかもしれないと、ヴィオラは思ったが、だからどうだというのだと失笑する。
 それはもしもの話で、結果として今エリティスと敵対している。その事実は変わらないのだから、関係ない。
 関係あったとしてもないとヴィオラは結論付けた。
 過去を水に流せることは――ヴィオラには出来ない。



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