零の旋律 | ナノ

Sideエリティス:狙撃主銃弾


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 同時刻、異世界エリティスでの戦闘は苛烈さを増すばかりだ。
 ヴィオラはジギタリスの言葉にしたがって、リアトリスとホクシアと共に目的を達成しようとするが、敵の数が多くて中々前には勧めない。無造作にトランプを投擲し、六茫星を描き爆発する。
 ミルラはユエリと激しい魔法を繰り広げている。
 無音の銃弾がネメシアの頬を裂く。ネメシアは流れてきた血を袖口で拭う。

「片目を負傷してその強さとは恐れ入るわ」

 率直な感想をネメシアは告げる。ジギタリスの銃弾は大半が正確ではあったが、それでもすぐに標準を両眼だった時の如く完璧にするのはすぐには無理なのだろう。所々標準がそれている。
 それでも、止めを刺せない程に強いジギタリスにネメシアは感嘆していたのだ。

「例え、両目を失おうとも、私は死ぬときまで戦うと決意した以上闘士は失わないよ」
「そう。残念」

 ジギタリスが距離を詰める。ネメシアは無音の世界へいざなわれた錯覚は幾度となくあった。ジギタリスの動作は無駄がなく洗練されており、一つ一つの音が無音によってかき消される。刃をぶつけあった感触はあるのに音がないせいで、接触しなかった感覚にすら陥る。袖口から投擲された二本のナイフをネメシアは弾き飛ばす。
 視線を一瞬だけジギタリスは騎士団の渦へ向ける。

「隙を見せるとは余裕みたいね」
「そんなことはないさ。ただ気掛かりなことがあるだけだ」
「気掛かり?」
「あぁ」

 それ以上ジギタリスは答えない。
 踏み込んできたネメシアに対してジギタリスは流れる動作で距離を取る。一撃を与えるに至らなかったネメシアは体制をすぐさま整える。
 一度、ジギタリスはマスケット形状の銃を仕舞う。ジギタリスが左手で拳銃を構え引き金を引く。ネメシアは空中へ跳躍して交わす。回転しながら地面へ着地すると同時にジギタリスが足払いをかけてくる。ネメシアがレイピアを突くと、ジギタリスは身体の重心を移動して交わす。身体を動かすよりも遅れて移動する髪の毛が数本持っていかれた。
 さらにネメシアは連撃しようとした時、腹部に痛みを感じた。

「え――?」

 ジギタリスの右手が――ナイフがネメシアの腹部を突き刺していたのだ。一瞬、痛みで反応が遅くなる。それを見計らったように、ジギタリスは至近距離で引き金を引いた。
 脳天を銃弾が抉る。ネメシアは凶弾を前にしてその場に倒れた。ジギタリスは再びマスケットに似た形状の銃を手にする。


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