U 金の瞳は魔族の証。 エレテリカはカサネ本来の姿を見て、あぁと納得した。脳裏に蘇るのはまだ策士カサネ・アザレアと出会う以前の記憶。 魔族の少年を見捨てたくなくて助けた――というのもおこがましいが――その少年こそがカサネ本人だったのだ。。 カサネが何故自分の元へ現れたのか、納得したのと同時に自分を嫌悪した。瞳の色が違うだけのことで今の今まで同一人物だと気がつかなかったのかと。だから、カサネが魔族だったことに関する驚きはなかった。 「なんで謝るの?」 「……いえ、すみません王子」 エレテリカは本当に何故カサネが謝るのか理解できない。謝るべきは自分であるのにも関わらず。 あの時の少年と再会出来て嬉しい、と素直にエレテリカは思った。 「カサネが謝る必要はない。カサネはカサネだ」 エレテリカは迷うことなく断言する。 『まさかエレも態度を変えるとか思っているんじゃないよな?』 シェーリオルの言葉が再びカサネの脳内を廻る。 『エレがそれを迷惑だと思うと、本当に思っているのか?』 ――本当に、そうだったな。 カサネは些細なことを気にする必要など何処にもなかったのだ。カサネが魔族であることを露呈させたくない思いすら本当に下らないことだったのだ。 だって――エレテリカは何も気にしないから。 策士失格だな、と内心で自嘲する。 「有難う。エレテリカ」 「――っ!」 エレテリカは猛烈に嬉しかった。初めてカサネが自分のことを名前で呼び捨てにしてくれたのだ。王子と呼ぶのではなくて“エレテリカ”と呼んでくれた。 余韻に浸っていたかったが、エレテリカとカサネの会話が終了するまで呑気に見守ってくれる敵はいない。アネモネが再び魔術を放つ。光の槍が無数に襲う。エレテリカとカサネは左右に飛んで回避した。 心身を統一しながら、エレテリカはレイピアを抜き取る。鏡のように澄んだ一点の曇りのない刃は、今のエレテリカの心情を現しているようだった。 「カサネ。俺も戦うよ」 「――わかりました。私の背中を預けます」 [*前] | [次#] TOP |