零の旋律 | ナノ

V


 金の粉が集まって形成されたか如く、黄金の輝きを有する瞳が、真っ直ぐにアネモネを捉える。
 王宮に籠るのではなく、自ら動いて障害物を消滅させるのであれば、忌み嫌って隠し続ける金の瞳――魔族の証無くしては不本意ながら作戦成功の達成率を著しく低下させる。自分の戦闘能力をカサネは客観的に評価していた。
 だからカサネは偽りの人族ではなく魔族としての瞳を露わにした。
 エレテリカが――カサネにとってただ一人の主が幸せになれる未来が作れるのならば自分の瞳すら利用して相手を倒す。
 それだけ、だ。

「私の目的――邪魔はさせません。魔族にも。それにしても意外ですね、貴方は頭脳労働が専門だと思っていたのに」
「必要があればいくらでも戦場に赴きますよ。犠牲無くして成果が得られるとは思っていません。必要ならば必要な犠牲はいくらでもだしましょう。それが――私だとしてもね!」

 カサネが踏み込む。先手必勝だとナイフを投擲する。アネモネは杖を掲げ、軌跡を描く。青の膜がアネモネの周囲を包み込み結界がナイフを消滅させた。

「ちっ」

 舌打ちしながらカサネは次なる一手に出る。魔法封じが破壊された現状、魔法を阻む障害はない。掌から雷の球体を生み出し放つ。空中に稲妻が走るが、アネモネの結界を破壊するには至らない。
 アネモネが結界を解いて良好な視界へ眩い閃光を放つ。カサネは間一髪で交わす。地面へ無数の穴いた。カサネは懐から、毒を放つ。風向きをアネモネへ限定出来るように魔法を相乗させながら――しかし、策士が毒を使用することはアネモネとて知っている。毒が毒性を持たないように魔術を放ち、解毒する。
 一進一退の攻防が続く。
 カサネが結論を導き出すまでもなく、アネモネの方が単純な戦闘能力において実力はカサネを上回っている。元々、カサネは戦闘に関して専門外だ。
 だからこそ、カサネは当初予定していたプランを変更してアネモネに勝負を仕掛けた。
 イ・ラルト帝国における頭脳はアネモネだ。それでも当初は直接対決をする選択肢はなかった。アネモネの方が戦闘の実力が上だからだ。だが、アネモネはサネシスとの戦いにおいて、疲弊していた。それをカサネは敵の頭脳を潰せるチャンスだ、と判断したのだ。
 アネモネが消えれば、今後の戦略において有利な立場に立てると踏んだからこそ、計画を変更した。

「さぁ――くたばって下さい、私たちの目的のために!」
「その言葉そっくりそのままお返ししますよ!」

 解毒された残り粉が舞う中をかける。ナイフが飛来する。眩い光が鎖となり四方八方から凝縮される。跳躍して間一髪で避けると、そのまま魔法で宙に足場を生み出しかけだす。ナイフと杖が交錯する。


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