Y 刀に雷が纏、大地を焦がす。振りかざされた隙を縫ってカーライトの剣が襲いかかるが、ホクシアは結界を展開して防御する。 「少女の癖にやるな」 「人を外見で判断しないで頂戴」 「そうか、それは失礼!」 刀と剣が撃ち合う。数度目の撃ち合いでホクシアは相手の攻撃を受け流す。 受け流したことによって、相手が重心をやや崩したのを好機だとホクシアは一歩踏み込むが、カーライトの袖口からナイフが飛来する。 ホクシアの刀では弾き飛ばすことば間に合わず、怪我を覚悟したが、寸前の所で結界によってナイフが“弾き飛ばされた”ホクシアが結界を作り出したか、とカーライトは舌打ちしたが、実際は違った。 突然守られたことに驚きながらもホクシアは、好都合と判断し、カーライトの足元に魔法陣を具現させる。 自分の身を守ってくれる結界は途切れていない。大地から雷が迸る。流れる電流を直撃したカーライトはそのまま地面へ倒れた。ホクシアの元へは結界が守ったことで届かない。 放電が終わったのを確認したホクシアは、倒れたカーライトの心臓に刀を突き立てた。 「……終わったわ」 治療が終わったジギタリスはシェーリオルにお礼を言うとすぐに戦場へ戻った。迷いのない足取りにシェーリオルは眉を顰める。 「(狙撃主にとって大切な片目を失っても、何故冷静でいられるんだ)」 その疑問に答えてくれるものはいない。 ホクシアは騎士三人に囲まれながらも刀を振るう。その時、騎士の一人が氷に貫かれて絶命する。 「二回も貴方に手を貸して貰ったら、私が貸しを返さなきゃいけないじゃない」 「貸し借りになんて――必要ないだろ」 「そう」 ホクシアの言葉を返したのはシェーリオルだった。背中合わせになり、死角をなくす。ホクシアの刀が相手の身体を貫く。 人族と魔族の共闘――今まで以上にその“共闘”している事実をホクシアは感じる。カーライトの攻撃から身を守ってくれたのはシェーリオルの魔導だ。 そして、今もシェーリオルは共闘の相手であり、自分を助けてくれた相手でもあった。人族の、それも王族の人であるのに、自分に対して共闘中であっても敵意を向けてこないのは不思議だった。 ――彼は、あの始末屋とは違うの。彼は王族。始末屋たちとは全く違う空間で生きてきた人なのに不思議ね。 [*前] | [次#] TOP |