零の旋律 | ナノ

U


「おわーこりゃ、確かにヴァイオレットの言った通り油断したら壊滅していたんじゃないですかー」

 第三部隊隊長レオメルが自分の部下も殺されている状況なのに、頭に両手をあてて呑気に呟く。

「呑気すぎますよ」
「レジットー大丈夫だよ、だってさぁ――此処で負ける程度ならただの捨て駒でしょ? 負け犬でしょ? そんなのに興味はないよぉ。まぁ、でも敵さんに無双させるのは気に入らないな」
 
 ニヤリと犬歯を覗かせながらガントレットをはめて先陣へ駆けだしていった。

「もう、隊長ったら」

 副隊長のレジットもそのあとに続く。槍が舞う戦陣へ――。

「次から次へとウジ虫みたいに湧いてきてきりがないですねー!」

 身軽な動作で槍を振るいながらリアトリスは敵をなぎ倒していく。複数を相手にする時は花弁の鞭を活用する。相手が花弁の網をかいくぐってくれば槍で受けて止める。

「もうー私はメイドなんですよー戦闘はお仕事じゃないですー!」

 頬を膨らませて抗議するが、騎士団にそのようなセリフが通じるわけもなく、怒涛の攻撃を仕掛けてくる。

「それにっ結構強いとかめんどくさいじゃないですか! 雑魚なら簡単に散らして上げれるですのに!」
「雑魚が騎士団やれるわけないっしょ」
「おおうっと」

 風の流れを敏感に読みとったリアトリスは反射的に槍の位置を変化させる。途端に衝撃が走る。

「いきなり乱入なんて酷いですねー。空気を読んでください!」

 普段空気を読まないリアトリスからの申し出だが

「いやだよー」

 あっさりと断られる。
 リアトリスが槍を振るうが、今までの敵よりも強いことは空気から伝わってくる。ガントレットは金属製なのか槍の先端と衝突しあう。衝撃で言えば相手の方が上なのに、衝撃を受けた印象を抱かないほどに平然とし、刃を破壊するかの勢いで連撃を繰り出してくる――否、刃を破壊するのが目的だ。

「ととと」

 それに気がつかないリアトリスではない。後退しながら距離を取る。

「全く酷いですね―乙女の武器を破壊しようとするなんて言語道断ですよー」
「酷い? どの口がいうのだか」

 リアトリスの前に現れた青年――騎士団第三部隊隊長レオメルはリアトリスの口調が言葉とは裏腹に何とも思っていないことを感じ取っていた。
 本心を隠して飄々とした態度で相手に接することが多いレジットだから見抜けたというわけでもない。リアトリスの口調が本心と程遠いいことは誰からみても一目瞭然だっただろう。
 その顔が笑っていたから――面白いとも思っていないのに、笑っていれば誰もが不自然に感じるのは当然だ。
 ガントレットの連撃を槍で防御するのではなく槍ごとリアトリスは回避する。背後から気配を感じて左へ移動するとそこを銃弾が通り抜けた。

「うわー酷いですねー前方と後方から挟み撃ちなんて! 乙女の身体に傷がついたらどうするんですか!」

 相変わらず面白いと思っていないのにリアトリスは笑みを浮かべながら抗議する。

「卑怯上等ですから」

 第三部隊副隊長レジットが拳銃を構えながら答える。


- 396 -


[*前] | [次#]

TOP


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -