零の旋律 | ナノ

帝都侵入


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「そういや、リヴェルア王都は大丈夫なのか? 戦力をこっちにさいてるだろ」

 カサネ・アザレアと同伴していた魔族サネシスが疑問を提示する。新雪の上を歩いている沈む感触がやがて、帝都付近になると踏みしめられて硬くなった雪へ変わる。

「おや、魔族である貴方が人族の心配ですか? そっちのほうが心配です」
「てめぇは人の純粋な好意を無下にするタイプだな」
「えぇ。まぁそもそも純粋な好意を貰うことは滅多にないのですが。と、話を戻しますと心配不要です。エリーシオ王子に帰還するように予め命じてありますから、部隊の少
数ずつ村々に残して、残りは帰還する頃合いでしょう。ですので、王都はエリーシオが守ります」
「王子を顎でこき使うなぁ……とんぼ返りだろ」
「使える者は魔族だろうが王族だろうが使いますよ。それに、エリーシオとはそういう協定を組んだのですから問題ありません。何より――守ってばかりでは勝てませんよ?」

 前方を歩いているカサネの表情をサネシスは見られないが、さぞあくどい顔をしているのだろうな――その童顔に似合わずに、と想像する。
 ヒースリアは既にカサネとは別行動を取っている。彼がカサネにとっての本星だった。何せカサネにとって現状で一番の戦力はヒースリア、否リテイブ・ロアハイトだった。幻影のカルミアは魔族の村を守るために既に札を切っている。

「帝都内には再び魔法封じを張り直したみたいですね。この間大規模なのを破壊したばかりだというのに手際がいいことで」

 カサネは帝都の門前で苦笑する。高い塀に囲まれた帝都は雪崩から身を守る役割もあるのだろうが、その塀自体が要塞だ。

「では、各々行動をしましょうか。ハイリ・ユートにユーエリス。任せましたよ」
「了解」
「はーい」

 カサネが振り返った視線の先にいたのは、白髪に帽子を被り重そうな杖を持った治癒術師の青年ハイリと、嘗て始末屋に破れた凶手の少女ユーエリスだった。己が役割を果たすため、ハイリの先導でユーエリスは続いていく。

「じゃあ、俺は俺で別行動するわ」

 魔族が片手を上げてから返答を待たずに進んでいった。カサネはそれを一瞥することすらない。
 己が用意した戦力として充分な手ごまに加え、策士として用意した兵士たちに指示を出してからカサネもまた一人行動を取った。


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