V 『つまり――現状何名いるかは知らないが、“ユエリ”という魔族が世界エリティスにいたからこそ、魔術師たちは世界ユリファスに干渉することが出来たんだ。魔族という――ユリファスにおける生命体がいたからこそ』 「正解。ユリファスとエリティスは本来交わることのない世界。星空を突き抜けて、空を突き抜けて、まだ見ぬ上空へ旅立ったことのない私たちが本来接することのない世界。それをレスは『奇跡』を起こした。決して交わることのない世界を執念で見つけ出し、荒唐無稽の夢物語を夢見て、粉骨砕身して、そして『奇跡』を起こしたんだ。レスは――否、争いの終結を望んだ魔術師たちの願いが『一つの奇跡』を起こした」 ユエリは一旦間を置く。金の瞳が見据えた先は人ではなく見果てぬ世界。 「だから、混じり合う糸が途切れてしまえば、二度とユリファスとエリティスは交わらないはずだったんだ。ましてや、レス一族は万が一のことを考えてユリファスに結界を張り巡らせた。それにより可能性は零からマイナスに変化したと言っても過言ではない。故に、世界エリティスは世界ユリファスを もう二度と“見つけられるはずがなかった”。だが、結果は見つかった。答えは簡単だ、エリティスには存在しない異端が紛れ込んでいたから」 『ユリファスからエリティスへ渡った魔族の存在を媒体して、世界ユリファスへの軌跡をたどったんだな』 「ご明察通りだ。私の祖先は、未知なる魔術師たちの世界が気になったんだ。好奇心や冒険心旺盛な人たちだと聞いている。どんな世界だろうと夢見たそうだよ。だから一目を盗み繋がっている糸を魔法で辿ってユリファスからエリティスへ渡ったそうだ。だが、祖先にとっての誤算は、エリティスを冒険している間に、レス一族がユリファスを結界で守り世界と世界を繋げた奇跡を閉じたんだ。故に、祖先は帰り道を失った。結果、祖先はこの世界に存在しない魔族としてこの世界で生き続けることになった。それが――祖先であり、今の私たちだ。だからこそ、魔術師たちがユリファスへ侵略出来た」 『成程な。確かに何故魔術師が干渉出来るのか不思議には思っていた。だが、魔族がいるのであれば話が変わってくる。魔族はユリファスの存在だ。だからお前たちを研究することで、世界と世界を繋がらせることを成功させたんだな』 「そうだ、“奇跡は二度も都合よく起こらない”二度目はただの研究成果の産物だ」 エリティスの魔族はそう断言した。 宙に浮遊した彼女は本来ならばあり得ない存在だった。 [*前] | [次#] TOP |