零の旋律 | ナノ

Saidエリティス:詐欺師収集


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 異世界エリティス、魔術師の街に侵入したアークたちは、人の気配がする手ごろな家を見つけて襲撃した。ヴィオラの情報で、魔術師の街は最初に入った統制の街と比べて監視が緩いと判明したからだ。家族団欒中の一家は突如現れた不審人物に悲鳴を上げるより早く、アークが玄関で手に入れた靴べらと、ヴィオラの魔術と、ジギタリスが投げた花瓶が当たって全員気絶した。

「リア、適当なもので縛っとけ」
「はいはーいです」

 アークの言葉にノリノリで応じたリアトリスは丁度いい紐がないか探す。ヴィオラは以前リアトリスに縛られた挙句もみあげだけツインテールにされたことを思い出して頬を引き攣らせた。

「全く持って手際がいいわね」

 ホクシアは若干呆れながらも、リアトリス同様、縄になりそうな物を探す。

「なんで強盗のようなことをしているんだよ」

 王子が強盗もどきをしたと知れ渡ったらさぞ新聞のネタになるんだろうなぁとシェーリオルは思ったが、普段カサネの使いとかを中心に強盗もどきより色々やっていたことを思い出した。
 例えば、イ・ラルト帝国に魔導を使って堂々と侵入して、襲撃したりとか。それに比べたら強盗程度はましな部類になるんだろうな、と思って心中複雑だ。
 ホクシアが縄になりそうなものを発見したので、それをリアトリスが受け取って華麗に縄で縛った。一か所に三人を放置しておく。

「ってか、なんでわざわざ人がいる家を狙ったんだよ。留守の所に侵入すればいいのに」

 シェーリオルがそういうとリアトリスがきょとん、とする。

「何を言っているんですー? 何時戻ってくるかわからない留守の家なんて面倒じゃないですかー。最初から一家が揃っていればそれ以上人が戻ってくる可能性なんて低いんですから」
「あぁ、成程」
「まぁ泥棒するなら割に合わないですけど、でも――休憩所として使うなら割にあいますですよ」

 にっこりとリアトリスが微笑んだので、シェーリオルは頬を引き攣らせて苦笑した。

「最初に入った街と比べたら、監視は緩い。三か所に点在する街に置いて、一番監視の目がないといってもいい、住宅街にいる程度なら、俺たちの存在がバレる可能性は少ないだろう。問題は、魔術師の街における中枢部――魔術研究所がある場所だ。そこには、魔術に関する重要文献や魔術研究が尤も盛んな場所。故に監視の目も厳しい。俺は、住宅街でもう少し情報が得られないかを集める。ジギタリスやシェーリオルも協力してくれ」

 リビングで椅子に座りながらヴィオラが今後のことを話す。ジギタリスとシェーリオルは同意した。

「私たちはどうするの?」

 名前を上げられなかったホクシアが問う。

「家にいてくれ」
「情報を集めるなら、人数がいた方が効率がいいと思うけれど」
「ホクシアの金の目は“人族”が持ち合わせていないものだ。下手に街を歩いたら目立つし、不思議に思われる。現状を知っている人ならば、ホクシアが魔族だと露呈する。それは好ましくない。アークとリアトリスは問題を起こしそうだから却下」
「わかったわ」

 ヴィオラに言われホクシアは納得する。魔族が住んでいる世界ユリファスとは違い、人族が住んで――そしてわかれた世界エリティスに魔族はいない。故に、魔族であることを体現する金の瞳をこの世界の人は誰も持ち合わせていない。
 アークとリアトリスのレインドフ家がまともに情報収集を出来るとは露ほども思っていないヴィオラは、余計な面倒事を起こさないでもらうため、外出を却下した。
 アークとリアトリスが同時に

「えー」

 と文句を言いだしたが、ヴィオラは受け入れない。


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