零の旋律 | ナノ

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 同時刻、王城の庭園で、彩られた季節の花が醸し出す雰囲気とは間逆の物々しい雰囲気が漂っていた。
 そこにいる人族は皆一様に武装をして待機している。
 彼らはエリーシオが直接指示を出す部隊であり、エリーシオにこの場で待機するように命じられていた。

「魔術師のお蔭で、メロディが殺す人数増えたよねっ! 一日に百人じゃなくて、二百人くらいやっぱ殺っとくべきだよねっ! そうしないと、殺す人数が追いつかないもんね!」

 その中で、独り言――なのかは不明だが、嬉々として是から夢を叶えるための一歩として殺す人数を脳内で暗算し始めた女性がいたが、

「あっー! 魔術師って何人いるんだろ! 人数わかんなかったら殺す数計算できないじゃんっ! ねぇ魔術師って何人なのかなっ」

 夢を実現するための情報が足りないと気がついて声を荒げた。
 が、しかし

「あっそっか! 全員殺したら問題ないじゃんっ! というわけで魔術師は全員メロディに下さいー!」

 すぐに自己完結した。
 女性の名前はメロディ・フォルジェ。個性派揃いのエリーシオ部隊、その中でも際立って個性的な彼女の頭部を、エリーシオがいない間の指揮を任されている男フォーロックが、軽く殴った。

「おい、メロディ。静かにしろ」
「なんで殴ったの! 人の夢を妨害しないでよっ! 殺しちゃっていい? 夢への一歩は大事だよねっ!」
「……静かにしろって、もうすぐエリーシオ様が来るから」
「えっほんと? じゃあメロディ静かにするよ」

 途端、一言もしゃべらなくなり直立不動の体制をとったメロディに、フォーロックはため息一つ。
 フォーロックの言葉通り、メロディが静かにしてすぐ、彼らの部隊を仕切る長――第一王位継承者であるエリーシオが姿を現した。
 先刻まで一緒だったカサネ・アザレアの姿はないが、カサネと一緒に歩いている姿を彼らは知らないので疑問には思わない。
 エリーシオの姿を発見した瞬間、メロディは恍惚する。

「待たせたな。じゃあ、次の目的地へ急ごう、魔法封じが設置されていると思われる辺境の周辺地図だ。最短ルートで行く。俺が先導を切る。フォーロックは最後尾で後方に注意しながらついてこい。他は手早く隊列を組め」

 手短に内容をエリーシオが伝えると、全員敬礼をしてから手早く隊列を組んだ。
 エリーシオに恋するメロディが、エリーシオの背後に隊列が組まれたのは、メロディの強い希望というよりも、エリーシオの命令ならばメロディは聞くからであった。

「じゃあ出発するぞ」

 エリーシオの号令で、彼らは辺境の地へ向かった。
 王子エリーシオが仕切る部隊だからこそ、自由に動ける権限を最大限に活用して、都市部から離れた場所へ向かう。


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