零の旋律 | ナノ

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「えぇ。そうですよ。元々、エレテリカを王にしたかったのは私がそうしたかっただけですし。エレテリカがいらないというのでしたら、私は別に拘りませんよ。ならば、エリーシオと協力した方がいいじゃないですか、特に現状においては最善です」
「そうだな」

 エリーシオも同意する。

「まぁ……ぶっちゃけると想定外な展開だったんですけどね」

 くすり、とカサネは笑った。
 エリーシオはエレテリカを王にする上で最大の障害だった。
 簡単に殺すわけにはいかない人物であるが、実際は密かに何度も殺そうとしていた。あらゆる策略をめぐらせて。けれど、エリーシオは悉く回避した。
 カサネがエリーシオを陥れようとしても、無理だった。
 王族としての教養、そして類まれなるレイピアの腕前、そして――エリーシオの命令だけを聞く独自の特殊部隊を有するエリーシオ相手では、カサネといえど難敵だった。
 さらに、カサネが抹殺したと絶対に露見してはいけない故に、絶対的に証拠も痕跡も残すことは許されない、王子が相手であったが故に、取れる手段が限られていたのも原因の一つだ。
 シェーリオルと手を組んだのも、エリーシオが予想外の強敵であり、エレテリカを王にするのが想定以上に厳しいと判断したからだ。

「では、私とエリーシオは下がりますね、王よ」

 必要な話しは終わったと一礼をしてカサネとエリーシオは退室した。
 赤い絨毯が敷かれた廊下を第一王位継承者のエリーシオと、第三王位継承者エレテリカの側近が並んで歩くと言う異様な光景に、目撃した人物たちは天変地異のまいぶれか、と魔術師が攻めてくると言う青天の霹靂並みの出来事を忘却して一様に二次被害は受けたくないと隠れ始めた。

「エリーシオが珍しく城にいるから皆恐れていますよ」

 クスクス、とカサネはおかしそうに笑う。

「いや、断じて違うだろ。お前と俺が並んで歩いているからだろ」
「所で何故王城に戻ってきているんですか? さっさと辺境の村にでもいって敵倒してきて下さいよ。人手不足なんですから」
「別の村いくのに休息として一旦戻ってきただけだ。すぐにまた向かうよ」
「お願いしますね。エリーシオの特殊部隊は強いんですから、手が回らない所に少数精鋭で動いて頂きたい。正規軍ではありませんから、動かしやすいですし」
「お前さ、俺の部隊をなんだと思っている。便利な使いパシリとか思ってないよな?」
「そこまでは思っていませんよ。せいぜい、便利な手ごまくらいですよ」


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