零の旋律 | ナノ

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「そして俺らを襲ってきたのは統制の街の軍隊――騎士団だ。ジギタリスが俺らに差し向けられた騎士を排除したから、お前らの方には撤退命令が下ったんだろうな」
「それも魔術で伝えられたのか?」
「そうだろうな。で、お前らの所にはどんな騎士団がやってきていたんだ?」

 あの場にいなかったヴィオラは少しでも情報を得ようととる。外見に一致する情報があれば、盗み見た記憶と適合するのがないか、探すことが出来る。

「変な服がいたですー! 以上」
「……要領を得ない。ホクシア、説明してくれ」
「酷いですっ」
「リアトリスはとりあえず黙れ。あとアークも」

 俺はまだ喋ってないぞ、アークはそんな視線をヴィオラは向けた。ホクシアはやれやれとため息をつきながらあの戦闘で得られた情報――アークが戦っただけだが――を整理してヴィオラへ伝える。

「ネメシアという女性が統括する部隊だそうよ。アークを戦っていた背の高い少年がいたわね、彼はディアと呼ばれていたわ。あと、変な服の青年はスイレンというらしいわね。その辺が部隊の中でも主力人物たちっぽいわね、雰囲気が違ったから」
「成程な。変な服ってのは……恐らく常盤の民と呼ばれる民族だろう」
「何かしら」
「監視を嫌がり街の外をなり合いとする集団のことを常盤の民と呼ぶらしい。ただ、常盤の民は戦闘行為……というより“戦うための力”を持つことを禁止されているから、戦えないだろう。常盤衆は滅んだしな」
「常盤衆? 名前からして常盤の民と関わり合いがあるのかしら?」
「あぁ。常盤の民を守るための戦闘集団を常盤衆というらしい、しかし、常盤衆は統制の街によって滅んでいるんだ。生き残った常盤の民は結果として守ってくれる存在がいなくなったから、街へ入ったって所だ。まぁ……見た記憶の情報だから、全てが正しいとも限らないけれどな」

 あくまで、記憶を見ることが出来る、それがヴィオラ・レスの力であり、記憶を見た人物が間違えた事実を知っていた場合はそのまま間違った事実だけが記憶として読み取れる。記憶を全て真実として信じるほど、ヴィオラは愚かではないし、他人を信じてなどいない。

「で、話を戻すけど、ネメシアは騎士団第二部隊の隊長だな。唯一の女性隊長だ」
「わかったわ、他には?」
「色々あるが、情報が足りないな。もっと集めたい。魔術師の街へ向かいたいな」
「けれど、監視されているんじゃないのかしら?」
「統制の街の監視が異常なだけだ、監視されていることには変わりないけれど、少しは監視が緩い。何より情報がなかった過去とは違い、今はある程度の情報がある。対策のとりようもある。何より、魔術師の街って名前がついているくらいだ、魔封じの装置について情報が手に入る可能性が一番大きい」

 ヴィオラの一言で一行は魔術師の街へ向かうことになった。


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