Y +++ 長剣とブーメランが衝突しあう。口元に歪んだ笑みを浮かべて、連撃を振るう。手を休める暇も、呼吸する暇をも与えてくれないような激しい猛攻。 「彼、強いですね、というか武器が変ですけど」 状況を理解しているのか疑いたくなるほどのんびりとした動作で、リアトリスいわく変な服の青年が女性に話しかける。 「まぁ弱い人を此方の世界へ送ってくるとも思えないし……ん、無線か」 無線から音が女性の耳に流れる。 「……了解した。ディア! 撤退だ」 無線から命令を聞いた女性が、アークと刃を交えている少年ディアへ声をかける。途端、今まで戦っていたのがウソみたいにディアは逃げ腰姿勢になり距離を置く。 深追いをするかアークは悩んだが、ヴィオラ辺りが後で五月蠅そうなので止めた。 女性の号令と共に、ディアはアーク達へ視線を鋭くしながら後退し、気絶した男は別の男に足を引っ張られ、リアトリスいわく変な服を着た青年はのんびりとした足取りで歩く。 最後に女性が、アークたちが攻撃をしてこないのを確認して撤退した。 撤退し、姿が見えなくなったところでアークは武器を懐に仕舞うと、タイミングを見計らったかのようにヴィオラとジギタリスが戻ってきた。 「ヴィオラにジギタリス、随分とタイミングがいいな」 「タイミング? 何かあったのか、いや、何かあったのは明白だな。争いの後が見える」 ジギタリスはアークが立っている場所周辺を眺めると、先ほどの風景とは地面が異なっていた。 「あぁ。なんか変な集団に襲われた。それも随分とタイミングが良く俺には感じられたな」 今度はシェーリオルが疑問を含めて答える。シェーリオルの言葉に彼らは同意する。 ただ一人――レスの力で記憶を読み取ったヴィオラを除いては。 「それについてだが、此処の街は“統制の街”と呼ばれているみたいだ。俺の集めた情報も不完全と言えば不完全だが、とりあえずこの場からは離れよう。危険だ」 ヴィオラの指示に従って一旦街から彼らは離れる。ある気ながらヴィオラは説明を始めた。 「世界エリティスには統制の街、魔術師の街、結界の街、この三つの街がある」 「たった三つだけなのか?」 「あぁ、人が住んでいる街は三つだけだ。そしてそれらの街は須らく――監視されている」 「監視?」 王族であるシェーリオルはその言葉に眉を顰める。 「あぁ。魔術によって街は監視されているんだ、勿論人が自由に出来る場面もあるがな。監視された街であり徹底的に支配された街だ。何故ならば――人が安全に生きていける場所はその三つの街しかなかったからだ、だから不要な争いが大きないように監視管理されているんだ。これ以上人が住める場所を失うわけにはいかないからな」 「成程な。だから街の傍に不用心にも来てしまった私たちは彼らの監視魔術に引っ掛かったというわけか」 ジギタリスの言葉にヴィオラは頷く。この世界にある街は須らく監視されている。故に、監視の魔術に引っ掛かれば動向などお見通しなのだ。 「リーシェ気がつかなかったのか?」 アークの言葉にややむっとしながらリーシェは答える。 「魔封じの装置が使われてなきゃ気がつけたとは思うけどな」 『魔導』が封じられていてはお得意の魔導を扱うことも容易ではない。 [*前] | [次#] TOP |