零の旋律 | ナノ

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「さて纏めますね。此方の世界へ残る組は私、王子、シャーロア、リィハ、カトレア、サネシス、ミルラ、カイラ、ヒースリア、ラディカル。魔術師の世界へはアーク、シェーリオル、ホクシア、リアトリス、ジギタリス、ヴィオラになります」
「わかった」

 アークは魔術師の世界へ行けるのならば異論はない。カトレアと離されたリアトリスだけが頬を膨らませていたがカサネはそれを無視する。

「では、そういう形で決行します。魔術師たちの世界へ行くための道を作るにはどこが最適ですか?」

 ヴィオラへ視線を向ける。考えるまでもなくヴィオラの脳内にはある一か所しか浮かばない。

「レス……俺たちが暮らしていた村だ。あそこは人族がこっちの世界へやってきた時に起点とした場所だから他の場所より回廊をつなげやすいだろう。……シャーロアとミルラ、それにリーシェで先に村へ行く。そこで道を作り上げる準備をするから、他の面々は準備を整えてから来てくれ。場所はホクシアに案内してもらえばわかる」
「わかりました、それではリーシェ、頼みましたよ」
「わかっているよ」

 一足先にヴィオラの案内で四人は村へ向かう。移動魔導は是から扱う魔導の規模を考えて使用しない。ミルラが一緒に行動する魔物にまたがると白髪と白の毛に埋もれて、まるで魔物と一体化してしまったようだ。他の面々もミルラが魔物を呼び寄せて移動する。リヴェルア王都周辺の魔法封じが破壊されている以上、魔物は魔族の支配下にある。

「さて……では三時間後村へ向かいます。それくらいの時間は彼らも必要でしょうから。此処に三時間後集合です」
「わかった」
「カサネ、そう言えば今帝国の動向はどうなっている?」

 エレテリカがカサネに問う。リヴェルア王国がこうして準備をしている間を呑気にイ・ラルト帝国が待っていてくれるわけではないのだ。
 それなのに王都リヴェルアは慌ただしさはあるし、異常事態であることには変わりないが――それでもそこまで切羽詰まっているようには思えなかった。

「大丈夫ですよ、帝国に関する動向についてはエリーシオの部隊が見張っていますから、連絡も頻繁にくれますよ」
「……エリーお兄様って本当に仕事が早いよね。少し前までは村とかに出向いて魔法封じに関することをやっていたのに」
「そう、ですね」
「カサネ、俺はどうすればいい?」
「王子は王宮にいてください。何か合った時真っ先に情報が集まる場所は此処ですから。情報を集めて取捨選択をしてください。必要とあれば兵も動かして」
「わかった。カサネは?」
「私は魔術師の世界とこの世界を繋ぐ道を見て作戦を詰める必要がありますから、村へまでは動向します」
「わかった、気をつけてね」

 エレテリカは駆け足で王城へと向かった。

「なんか王子と策士っていうより部下と上司みたいだなぁ」

 アークがぼそりと漏らした呟きと同時に鎖付きナイフがアークの顔面に向かってきたのを指と指の間で受け止める。

「危ないだろ」
「戦闘狂に危ないだなんて言われたくありません。私と王子の関係を上司と部下だなんて言わないでください。あの手この手を使って社会的に抹殺しますよ?」
「それは困る。仕事が出来なくなる」
「本当に歪みがないくらい仕事中毒ですよね。いっそ清々しいですが」
「……私は少し失礼しすね。策士“様”とこれ以上同じ空気を吸いたくないので」
「ご自由に外を満喫してきて下さい」

 険悪な雰囲気を醸し出しながらヒースリアはその場から離れた――何処か不機嫌な顔で。


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