零の旋律 | ナノ

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「異世界へいく案は採用でいいですか?」
「採用も何もお前がそう言ったんだ、それ以外に最適な策は存在しない」
「当たり前です」
「で、何だ魔術師の世界を世界征服でもするのか?」

 シェーリオルの言葉にラディカルは吹き出しそうになった。

「世界征服か、一度は夢に見るよな」
「……は?」

 ラディカルは信じられないという瞳を、世界征服を一度は夢に見ると発言したアークへ向ける。

「いや、お兄さん? 普通は一度も夢に見ないと思うっすよ」
「え? 子供のころ将来世界征服したいなぁみたいなことって思わないの?」

 意外だ、と言わんばかりの表情にヒースリアはため息をついた。

「そんなこと思う子供なんていませんよ、馬鹿ですか? 失礼馬鹿でしたね」
「一つ聞きますがアーク・レインドフ。貴方はじゃあ何故その夢を実現しようとしなかったのですか? あ、一応言っておきますが実現しなくて良かったと私は思っていますよ」

 ヒースリアとカサネの言葉に、アークはさらりと答えた。

「始末屋の仕事出来ないだろ」
「…………」
「そりゃ、世界征服を目的にしたら強い奴と沢山戦えそうでよさそうだけど、でも仕事出来ないなら世界征服目指す意味ないだろう?」
「貴方が仕事馬鹿で良かったです。あと、私は魔術師の世界を征服する作戦は練りませんからね」
「えー」
「……ちょっとそこの無音。そこの戦闘狂を少し黙らせてもらえませんか?」

 アークの言動に、カサネはついに嫌悪しているはずのヒースリアにアークを黙らせてほしいと頼みだした。

「そうですね。主、これ以上余計な口を開くようでしたら、睡眠中に主への恨みつらみを呪詛のように唱え続けますからね」
「止めろよ!」
「はい、口を開いたので今晩から実行します」

 そのやりとりでアークは口を噤んだ。

「さて、アークのせいで少し話がずれましたが、世界征服はしません。何も魔術師の世界全土を相手にする必要はないのですから、というかそれをするにはいくらなんでも人数が足りません。少数精鋭で世界をおとせるほど彼らは甘くないですし。魔術師の世界で元凶――つまり、私たちの世界を侵略しようとしている輩の上層部を潰すんです。そうすればおのずと彼らの作戦成功率は低くなりますので後は此方が掃討すればいいのです。詳細については是から煮詰めますので今晩は自由に過ごして下さい。明朝再びこの場所で集合します」

 窓の外に目をやれば既に夕日が沈みかけている。

「……ミルラ、お前にちょっと話がある」
「丁度いい。私もお前に話があったところだ」

 ミルラとシェーリオルは、王城へ向けて移動した――シェーリオルの移動魔導を使って。


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