零の旋律 | ナノ

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 拠点に戻ると、作戦会議をしているのか、カサネは地図を広げてジギタリスと会話をしている。異国であるイ・ラルト帝国の情報を聞きだしているのだ。
 その情報をジギタリスが口にしているのであれば、彼女は既にイ・ラルト帝国へ戻る選択肢を自ら消している。

「あれ、誰っすか? その白髪のおにーさんと魔物はって魔物!?」

 大して驚いた様子のない人族とはかわってラディカルが反応をした。そして、白髪と魔物の単語に先に戻ってホクシアとはほぼすれ違いになっていたサネシスが振り返り固まった。

「どうしたんだ!? 何故ミルラが」
「一緒に来ただけだ、問題あるか?」
「いや、問題はあるけど……それはいいとして。人族嫌いなお前が王都になんてよく足を運んだ」
「あぁ、吐き気がするな」

 嫌悪感を隠さないミルラに、カサネが一瞬振り向き視線を鋭くした。その時、ミルラは違和感をカサネに覚える。
 ――何だ、こいつ……?

「ホクシア、彼は誰です?」

 髪の毛で殆ど瞳が隠れているとは言え、魔族であることは疑いようがない。

「ミルラよ。私たち魔族の中でもかなりの長命で、世界ユリファス全土にヴィオラと共に結界を貼っていたのが彼よ」
「そうですか。何故此処に?」

 歓迎した態度を取られるとは思ってもみなかったが、このカサネという少年はミルラにとって気に入らなかった。

「人族が嫌いだからだ、それだけだ」
「そうですか。まぁ構いませんよ詮索する興味もありませんし、何より人数が多いに越したことはありませんから。会話に加わるつもりならどうぞこちらへ」
「……わかった」

 尊顔不遜な態度を取るミルラだが、やはり他の面々は気にした素振りを見せていない、否ヴィオラはカサネとの会話の合間を探していた。声をかけるタイミングを探していたのだろう。

「ミルラ! 大丈夫なのか?」

 しかしタイミングが見つからず、微妙な所でヴィオラは声を上げた。

「問題はないし、その件については心配するな」
「わかった」
「策士カサネ、一つ問う。リヴェルアの魔法封じは着実に数を減らしているな?」
「えぇ。第一王位継承者であるエリーシオが各地で破壊したという報告も入っていますし」
「あ、さっき私も一つ壊してきたですよー!」

 場の流れを読まない能天気な報告が一つ増えた。

「……ということですので、結構な数は最初と比べて減っているでしょう。そちらは結界の担い手といいましたね、何か現状は把握できていますか?」
「リヴェルアほぼ全体へ魔法封じが張られた時は結界に一斉攻撃が加えられ一部の結界が綻んだ。今は修復させたが、恐らくはそこから幾人かの魔術師たちは紛れ込んだだろうな。それに結界への攻撃は続いている。集中攻撃を喰らえばどこかしらの結界は綻ぶだろう」
「成程。理解しました。やはり元凶を叩くしかありませんか。シオルからの報告で確実にイ・ラルト帝国の王ルドベキアは魔術師へ加担していることが確認出来ましたし……」
「まぁ移動魔導を使おうにも今度は帝都ないも警戒されているとは思うけどなー」

 能天気にアークが言う。レインドフは能天気の集まりか、という今さらな突っ込みをしたい衝動にラディカルはかられたが、のど元まででかかった言葉を飲み込む。
 帝国内が警戒されるのは事実だ。下手をすればシェーリオルの魔導を警戒して帝都内を魔法封じする可能性がある。

「わかっていますよ。ですから二手に分かれて元凶を叩きましょう」
「二手?」
「えぇ“魔術師たちの世界”へ侵入しましょう」

 カサネの発言に、彼らは驚愕した。言葉が全て失われてしまったかの如く静けさが辺りを支配した。


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