零の旋律 | ナノ

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 ホクシアとリアトリス、シャーロアは魔族の村へホクシアの仲間五十人あまりを連れていくためリヴェルア王都の外で魔物を呼び寄せて移動していた。
 魔法が通じない範囲に入れば、ホクシアは帯刀している刃で魔物を切り殺す。
 魔物は元々人族が魔石を体内へ入れた成れの果て。故にホクシアは魔物を殺すことに対して躊躇はなかった。草原を無数の魔物と魔族、そして二人の人族が駆け抜ける。

「貴方は何故始末屋と一緒にいるの?」

 ホクシアがリアトリスへ言葉をかける。

「それが、“約束”だから」

 リアトリスから一切の喜怒哀楽が消え去る。その様子にホクシアは僅かにだが気押された。

「どういうこと」
「私にとってカトレアが全て。カトレアが安心して生きていける場所であるのならば、
始末屋だろうが何処だろうが、私にとっては構わない。そういこと――ですよ」

 二コリとほほ笑む。それが作り笑いだと理解出来てしまった。襲われた時を危惧して最後尾を走るシャーロアに会話内容は聞こえない。
 最前列でホクシアとリアトリスは会話を続ける。

「貴方も戦えるようだけど、その実力はどれほどのもの?」
「さぁ。私は私の実力を何に例えるかなんて知りませんですよ―。でも、まぁアークとは互角に戦えますですよ?」

 普段の口調で、でも普段の口調だからこそ、その台詞が酷く違和感を生じさせた。

「例えてるじゃないの……わかったわ、つまりこういうことね。レインドフ家の面々は変人の集まりだと」
「酷いですー! 主は変人でも、私は普通ですよー! あ、ヒースも変人かもしれないですねー。それと、カトレアを変人だと呼んだら許さないよ」

 最後だけ真面目に、凍てつく視線をホクシアへ向ける。
 その途端、ホクシアは理解した。この少女は自分を躊躇いもなく殺せる存在だと。
 双子の妹のためならば、誰だって躊躇いなく刃を向けると。
 その理解は正しかった。事実カトレアを暗殺者ノハ・ティクスに人質として取られた時、リアトリスはアーク達に刃を向けた。一切の手加減なく。

 魔族の村へ到着する前に、魔法が使えない範囲に入った。ホクシアとリアトリスは魔物を冷静に殺す。その後は徒歩で魔族の村へと進む。

「あ、私は折角ですからこの辺の魔法封じを探して破壊してくるですよ?」

 リアトリスが魔物を殺した幾重もの花弁がついた槍を片手に申し出たのでホクシアはお願いをした。リアトリスであれば、魔法封じの装置を見つけることも容易だろうと直感が告げていた。
 村へ到着した後、シャーロアとホクシアが身体も心も傷を負っている魔族の仲間をもう大丈夫だと優しい声をかけながら案内する。
 途中、白の狼のような魔物のふかふかの毛に埋もれながら、白の魔物と同化するほどの白髪を持つ人物がやってきた。

「ミルラ! そういえば貴方大丈夫だったの?」
「私の心配をする必要はない。この子らは?」

 捕らわれていた魔族は老若男女含まれていたが、ミルラにとっては全て“この子ら”と呼べるほどに若いのだ。


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