Z 「さて、ヴィオラ」 シェーリオルが近づいて耳打ちをする。 「わかったけど……いや、わかった」 何の理由があってそうするのかはわからないが、魔法封じがないのに魔導を必要最低限しか使わないわけが彼にはあるのだろうとヴィオラは判断する。 「ジギタリス、悪いが俺が狙われたら守ってくれ」 「了解した」 ジギタリスが短く同意すると、ヴィオラはジギタリスの背に守られる位置に立つ。 途端、足元を描く。線だけの円。それらは徐々に青みを持ち、複雑な文字が円の中に増えて行く。 「氷華の氷柱、星星の流れ――」 ヴィオラが詠唱をしていくたびに、円の中に文字が描かれていく。青と水色が重なり合う。 上位の魔術を使うことを察知した、ヴァイオレットが茶色の髪を揺らしながら改造銃でヴィオラを攻撃したが、発砲した銃弾はジギタリスの銃によって阻まれる。鈍い音を立てて銃弾は転がる。 「チッ」 ヴァイオレットが舌うちした隙にカイラが背後に周り刃を振るう。ヴァイオレットは改造銃でそれを受け止める。 帝王ルドベキアの猛攻をアークは受け流す。力ではアークよりもルドベキアの方が勝っていた。力任せに振るうだけで、その威力は絶大だ。コンクリートの床を砕き、地形を変える程の威力を誇っている。アークは歪な形になった床を、軽業師のように動く。 「あははははっ」 この場に不釣り合いな笑い声。それは戦闘狂の声だ。アークの瞳が不気味なほど輝いていた。 「……笑うか、この現状で」 振るう一閃、炎のカマイタチが襲いかかる。ルドベキアは顔を顰める。この、身なりのいい服を着た紫かがった黒髪を持つ人物は一体誰だ、と。 ルドベキアは王族であるシェーリオルのことは知っていても、リヴェルア王国の貴族全員の名前を知っているわけではないし、ましてや始末屋のことを知っているわけでもない。 「ちぃ、なんなんすか!」 別の場所でラディカルは叫ぶ。魔術師たちは想定外に強かった――だから、ラディカルは諦めて眼帯を外す。 「こいつ魔族か」 魔術師の誰かが声を上げる。金の瞳が露わになり、ラディカルは『魔法』を思う存分扱う。魔法に関してラディカルはどちらかと言えばカイラ同様不手だ。しかし、使った方がラディカルは強い。 [*前] | [次#] TOP |