零の旋律 | ナノ

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 アークは帝王ルドベキアに向かって一直線に走りだす。そこへ向かってくる魔術師の放った火の弾を、拙いながらもカイラが水の魔術で消し去った。
 ラディカルは魔術師たちを何とかしようと大ぶりのブーメランに回転を加えながら投げる。
 ヴァイオレットがそれをくぐって交わした瞬間、ヴィオレットの直感が危険信号を発した。咄嗟に飛びのく。途端、肩に真っ赤な血の華が咲く。続いて、足に激痛が走る。貫通した弾丸が壁に食い込む。

「なんだ?」

 ヴァイオレットは体制を立て直し、狙撃を警戒して結界を貼る。他の魔術師たちも様子に気がついて結界を貼ろうとしたが――それより早く数名が心臓を撃ち抜かれて倒れた。

「何だっ!」

 ヴァイオレットは銃弾がしただろう方向へ魔術を放つ。光り輝く一閃は狭い扉を広々とした扉へ一瞬のうちに変える。そこへ姿を現した――無傷で――のは、白銀の髪を持つ、白と赤に身を包んだ二人の人物だった。

「誰だっ!」

 ヴァイオレットが叫ぶと同時に、白銀の髪を持つ片方が、白銀のマスケットの形状をした銃の引き金に手をかけた。やはり、音はしない。
 咄嗟にヴァイオレットは結界を強化する。銃弾を弾いたが、地面に落下した銃弾すら音がなかった。

「……無音、の殺し屋か」

 ヴァイオレットは眉を顰める。白銀に赤の相貌は“無音の殺し屋”に通ずるカラーだったからだ。リヴェルアで有名な殺し屋とは言え、帝国で無名なわけではない。その音の無い発砲を見れば嫌でも推測がつく。

「一体呼び寄せてどういうつもりですか? 人手不足とかふざけたこといいましたら打ち抜きますよ」

 いつもの丁寧に見せかけた辛辣な口調でヒースリアはヴィオラに言う。

「いや、リーシェが呼べって言ったから」
「まぁ、いいですけれど。外の害虫駆除にも飽きてきた所ですし」

 相当の数を相手にしただろうヒースリアとジギタリスだが、服に汚れ一つ見当たらない。近づく前に全てを銃弾で撃ち殺したのだろう。

「それにしても、帝国の王まで出てくるとは豪勢ですねぇ。王と愉快な魔術師たちって所ですか?」
「いや、それは……流石にやめろよ」

 思わず笑いそうになったヴィオラだが、ギリギリの所で止めて、疲れたツッコミを入れる。
 そんな余裕があるはずないのに、ヒースリアたちと会話をしていると、余裕な状況だと錯覚してしまいそうになる。その錯覚が仇となり細い糸で連なった光の刃が襲いかかってきたのに反応するのが遅れた。

「うおっ」

 ヴィオラは跳躍して回避すると同時に、魔術師へ向けてトランプを六枚投げ、六芒星を描き爆発させる。爆風に魔術師が無残にも飛ばされ転がる。


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