零の旋律 | ナノ

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 ヴィオラはヴァイオレットを殺そうとトランプを無数に投擲する。それらは全て六亡星を描き次から次へと爆発していく。

「レスの魔術師か」

 ヴァイオレットは後方に飛ぶ。ヴァイオレットが飛んだ先には魔術師が二人、詠唱をしながら陣を共同で作り上げていた。カイラは魔術師を殺そうと近づく。手に握られた刃が一閃する。結界を軽々と切り裂いたそれによって魔術師は腕から血を流す。魔術師はすぐさま氷の魔導を放つが、カイラは軽やかな動きで交わしながら、鎖がついた刃を投擲した。しかし対象を貫くことがなかったため鎖を引っ張ってすぐさま回収する。
 ヴァイオレットが引き金を引こうとした時、ヴィオラが眼前に迫ってくる。掌から迸る冷気にすぐさまヴィオラが魔術を使っていることを確信して回避行動をとる。
 魔術が、魔導が、刃が、圧倒的暴力が振るわれるそこは破壊の跡が激しい。
 しかし――二人の魔術師が詠唱しながら陣を描き守っているそれ――恐らくは世界ユリファス全体を覆うことが出来るのだろう、規模が違う魔法封じを結界で守っていた。
 魔術師がシェーリオルを殺そうと近づいてくるので、レイピアを素早く抜き取り対峙するが、シェーリオルの意識は魔法封じに向いていた。
 あれを壊せば自分たちの目的は達成されるのだ。
 ――さて、どうする。
 水の龍が襲いかかってくる。ダンスを踊るようにシェーリオルは交わすが、しかしアーク達ほど余裕を持って交わすことは出来ない。
 ――やはり、魔導を扱わないでやるってのは難しいか。
 しかし、それでも魔導を連発するのは避けるしかなかった。帰り、がある以上行きで全力を尽くすわけにはいかない。

「ヴィオラ!」

 ヴァイオレットと激しい魔術と魔術の攻防を繰り広げているヴィオラの背後に周り、名前を呼ぶ。
 襲いかかってくる光の閃光をヴィオラは氷の盾で防ぐ。

「何だ、邪魔をするな!」
「何があったのか知らないが、今の目的はそれじゃない。魔法封じを破壊する方が先決だろ」

 シェーリオルの御尤もな言葉に、ヴァイオレットとのみ戦うことに集中していたヴィオラはバツが悪そうな顔をする。
 それを隙とヴァイオレットはとり強力な魔術を仕掛けてきた。

「ちっ」

 ヴィオラは舌打ちをしながら、短く詠唱をして結界を作り出し魔術を防ぐ。弾きとんだ魔術は地面に当たると同時に火柱を立てる。ヴィオラは素早く水の魔術でそれを沈下する。

「あの狙撃主コンビニ伝令を送る手立てはあるか?」
「そりゃあるが」
「なら、二人にこっちへ来るように伝令を飛ばしてくれ」
「……わかった」

 ヴィオラの掌から青色の糸が無数に現れ、それらが鳥の形を形成していく。鳥の形をしたそれは、羽ばたき入口へ向かっていく。銃弾が鳥の形をしたそれを撃ち落とそうと向かってきたが、直撃する瞬間、糸の形状へ戻り銃弾を包み込んで消滅させた後、再び元の形へ戻った。

「(何故、リーシェお前が魔導を使わない? 俺より強い魔導師であるお前が)」

 しかし、その疑問を問いただす余裕はなかった。彼らの眼前から迸る焔の一閃がやってきたからだ。

「なっ――」

 シェーリオルは突然の出来事に目を丸くしている。それらは全てを焼き殺す勢いを誇っていた。魔術師たちは何時の間にか射程圏外へいた。彼らの脳内には魔術によってある伝令がきていた。だから、彼らは攻撃を喰らう前に移動したのだ。焔が迫ってくる。
 背後にいるシェーリオルをヴィオラは一瞥してから、氷の結界を作り出した。さりげなく結界術を扱えないカイラがヴィオラの背後に移動していた。
 氷の結界は焔の熱で水へ代わりそして蒸発する。しかし、ただの氷ではないが故に、失った部分には新たな氷が生み出されて熱を冷ましていく。
 焔の攻撃が止んだ時には、地面が灼熱に染まっていた。ヴィオラは移動できるように雨を降らす。熱と水が重なり合って煙が出来るのを素早く風を巻き起こして霧散させる。


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