零の旋律 | ナノ

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 A地点の階段を上り屋上へと出たアークとホクシア、それにエレテリカに当然ながら帝国の兵士が待ち構えていた。魔術師がいるのかは判断出来ることではない。何せ、いくら自分たちも魔法が封じられようとも、魔法封じでリヴェルア王国を圧倒的出来る、勝てると断定でもされれば疑問を挟む余地もないだろう。
 イ・ラルト帝国よりもリヴェルア王国の方が『魔法』に依存している節が強い。『魔導』の技術だけであれば、リヴェルア王国の方が上だ。
 何より、リヴェルア王国には最強とも最高とも最高峰とも名高い魔導師でありながら王族でもあるシェーリオルがいる。
 『魔法』が使えなくなるに越したことはない。
 イ・ラルト帝国は予め魔法が使えなくなることが知っているのだ。武術に特化した兵士を送ればいいだけの話。圧倒的にイ・ラルトの兵士は有利であるはずだった。

「答えなさい。貴方達の目的は一体何?」

 ホクシアが鞘から刃を抜きながら凛とした声で問う。

「そんなもの、わかりきっているでしょ」

 金の瞳を確認した兵士は侮蔑した視線ではきすてるように言葉を返す。

「えぇ、わかりきっているわ――それでも、聞いとく必要がないものなんてないわ」

 ホクシアは、それでもこれ以上問い詰める必要はないと判断して、一歩踏み込む。
 魔法が使える以上、ホクシアは魔法を使わないわけがなかった。紫電が地面を迸り飛び出す。
 咄嗟に兵士は交わすが、交わしきれず裾が焦げる。

「そうですか、でも――答えるわけないでしょ」
「……そうね。前々撤回するわ、人族が答える答えなど、今さらよ」

 魔族が人族と歩み寄るための歴史は既に終結している。歩み寄る必要などないと、魔族は判断を下した。だからこそ、魔族にとってそれが害になるのであれば理由など関係ない殺せばいいのだ。無残に殺されていった魔族の光景は今なおホクシアの脳内にこびりついて離れない。

「……」

 ホクシアの切り捨てる言葉をエレテリカは複雑な心境で耳にしていた。
 隙のない構え、でエレテリカはレイピアを構える。心身を統一して向かってくる帝国の兵士相手にレイピアを振るう。華麗に一閃するそれは舞を踊るようだ。
 アークは何処かに武器がないかなと探して結論、魔法封じの装置を武器にした。

「おっ」

 予想外に重かったが、武器として振り回せないほどの重さではなかった。でたらめに振り回して相手に一撃でも食らわせれば、それだけでかなりの痛手を負わせることが出来る。
 魔法封じの核を狙撃され魔法封じの効力は失っているとはいえ、装置自体頑丈な作りになっている。その為人族の一人や二人吹き飛ばしたくらいではひびが入ることすらなかった。
 あっと言う間にそして圧倒的な力を持ってA地点を彼らは制圧した。

「もっと骨のある奴がいればよかったのに」

 戦闘狂としてはもう少し戦っていたかった。アークの口から本音が少し漏れる。
 そのあと視線がホクシアやエレテリカに向いたが、二人は一斉にそっぽを向いた。


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