零の旋律 | ナノ

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「ヒースリア。貴方は?」
「はっそこの始末屋とは違う」
「なら信用します。貴方達は狙撃の経験は?」
「ない」

 他の面々は一様に口を揃えて無いと言う。仮にあったとしてもあの距離を的確に撃つことは不可能だった。魔導や魔法を使って視力を強化し、銃弾に風の抵抗を無効化出来る術も付加出来ない現状で、そんな神業ともいえる狙撃を出来る自信は皆無だった。

「……同時に破壊しないと後々の展開がきつくなります。……貴方たちの中で狙撃主に心当たりはないですか?」
「一人いるけど、帝国にいるから連れてくるなら時間がかかるぞ」
「構いません。多少なりと時間がかかっても確実に破壊出来る方が効率いいです。その間に私はさらに策を練っておきます」
「なら、行って来る」

 “狙撃主”しかも、長距離からの狙撃を確実に成功させるだろう実力者にアークは心当たりがあった。尤も――その“人物”を連れてくればヒースリアが顔を顰めることは容易に想像が出来た。

「待て、アーク」
「なんだ?」
「俺がついていく」

 ヴィオラがソファーから立ちあがる。そのあ足取りは覚束なかったが、それでも数時間休めただけで、大分体力が回復したのだろう。

「お兄ちゃん!?」
「大丈夫だシャーロア。帝国に船で移動するなら時間がかかりすぎる。魔物を捕まえよう。術でなら操ることは可能だろう」
「どれくらい時間がかかる?」
「魔物なら往復で一日と少しってところだろう」
「よし、わかった」
「気をつけてね、お兄ちゃん」
「あぁ」

 シャーロアは尚も心配だったが、しかし魔物を使って移動するのが一番短時間で済むことはシャーロアもよくわかっている。自分がその術を知っていれば、とは思うがそれよりも自分に出来ることをしようと思いなおす。
 何より兄には今、始末屋アーク・レインドフがついているのだ。万が一はないと信じている。

「では、今日は此処に泊ってください。シオル、手伝って下さい」
「わかった」
「俺は?」

 自分にも手伝えることがしたいとエレテリカがカサネに問う。

「王子……わかりました、手伝ってください」

 真剣な瞳に、カサネは拒否が出来なかった。王城で指示を出すだけだから、比較的安全だとカサネはエレテリカに対しての危険性をすぐさま計算して問題ないと導き出す。
 カサネを筆頭に慌ただしく準備をする中で、ホクシアはサネシスと会話する。

「カサネ・アザレア。確かに噂通りの知恵が回るようね。不本意だけど、手を組むことには大いに賛成だわ」
「あぁ、そうだな……俺、実はカサネに一度息子を探してくれって頼んだよ。断られたけど」
「そう。まぁあの策士がそのような私情を手伝ってくれるとは思わないわ」
「だよな、でも望みは捨てないさ。ミルラは大丈夫だと思うか?」
「ミルラの心配はしていない、あのミルラよ?」
「そりゃ、そうだな」

 ミルラの実力を一目見た者ならば、彼を殺せるものなどこの世にいないと思いを抱いても何ら不思議ではない力を保有している。結界における絶対防御を可能にするのがミルラだ。

「けど、心配があるとすれば村が大丈夫かってことね」
「ルキは魔物と友達だし、武道派の仲間も数人いる。大丈夫だろう」
「……そうね」
「心配したってきりがないからな。仲間を信じるしかない」
「わかっているわ」


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