零の旋律 | ナノ

X


 “王子”を狙った輩によりも魔法封じを調査する方が先だと、シェーリオルとエレテリカは判断する。
 とりあえず、魔族であるホクシアたちが目立つ場所にいては困ると、憲兵を呼ぶ前にアークたちだけは移動させた。王都リヴェルアにあるホテルの最上階かつ、一番高級な場所がとれる暗号をアークへ伝える。それは王族が密会をするときに使われる場所の一つであった。
 流石に魔族が堂々と歩くのは――とカサネが上着を脱いでそれをホクシアに被らせる。

「是を着ていて下さい」
「……わかったわ」

 不承不承だったが、頷いて深く帽子を被る。服装とはミスマッチ名組み合わせに加え、上着の肩は破れ血が出ているので目立つが、逆に目立つ要素があると、他の目立つ部分を相殺してくれる。
 比較的安全にシェーリオルが指定した場所までは辿りつけた。
 あの場に残っているのはシェーリオル、エレテリカそしてカサネだけだ。
 カサネが何故あの場に現れたのかは後々説明してもらうことにして、とりあえず最上階の最高級である場所でヒースリアは寛ぐ。アークは他の面々をこの場所に呼ぶため奔走していた。
 リアトリスたちも集まり、最後にはエレテリカとシェーリオル、そしてカサネが揃った。
 王族の二人は状況を余り理解していなかったが、それでも魔族が二人いることに対して嫌悪感は示さなかった。むしろ敵意を向けていたのはカサネである。
 状況を知らない彼らに情報を説明をヴィオラが簡潔する。それだけでカサネは大方を理解したのだろう、巻物上の白い紙を取り出し、ペンで王都リヴェルア全体の地図を簡単に描き始めた。

「クセルシア街が、魔法封じに会ってから数日しか立っていません。それを鑑みると」

 そういってもう一つの巻物上の紙を取り出して、そこにはクセルシア全体の地図を描き始める。
 カサネの脳内にはどうやら街が地図として記憶されているようだった。
 次に、赤のインクで魔法封じの効果があった場所を囲んでいく。

「大体の効果範囲はこれだけになります。勿論規模にもよるでしょうから、何とも言えませんが――けれど、この規模の装置だった仮定するならば、王都には複数の装置――そうですね、王都を覆うだけならば二つ、でしょうか。それらが何処かに置いてあるとみて間違いないですね」

 カサネは素早く自分の推測を紙に書き出していく。達筆で記されたそれは、成程カサネ以外にもわかりやすい。

「といっても問題はそれだけではありませんが」
「どういうことだ?」

 サネシス――否、魔族にとって嫌な予感しかしない。その時、ヴィオラの顔色青ざめると同時に、倒れるように力を無くした。咄嗟にアークが支える。

「大丈夫か?」
「……」
「ヴィオラ?」

 ヴィオラの様子がおかしいのはわかるが、何がおかしいのかがわからない。だが、その様子をすぐにホクシアは察知する。

「まさか、魔法封じは王都以外にも?」
「……恐らく。あぁ、大丈夫だアーク」

 そうは言っても体調が芳しくないのは一目瞭然だ。アークはソファに座らせる。

「ミルラの結界の大半が解けかけているのを感じた。それと同時に、結界へ攻撃が加えられている」
「成程、一気に顔色が悪くなったのは術の反動か?」

 状況を理解しきっていないが、術に精通しているシェーリオルは結論を導き出す。ヴィオラは頷く。まだ喋るのも辛いのを無理して喋っているのだろう。


- 284 -


[*前] | [次#]

TOP


第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -