零の旋律 | ナノ

王都魔封じ


 王都リヴェルアの郊外までは、魔物で移動し、人目につかない所で離陸してから徒歩で向かう。
 同行したシャーロアは道中、リアトリスとカトレアと談笑していた。時々ハイリがからかわれていたことは言うまでもない。
 シャーロアは最初やや緊張した面持ちだったが――当然だろう、是から合う相手はいくら気さくとは言え王族の第二王位継承者なのだから――リアトリスの空気を読まない明るい言動に緊張がほぐれた用で笑みを見せている。
 ちなみに報酬に貰った魔石は今、カトレアのネックレスと化していた。カトレアとシャーロアを呼んだのち、綺麗だから、という理由でアークはカトレアに上げたのだ。
 本当に報酬には拘らないのだな、とヴィオラは嘆息する。それが売ればどれだけの価値を持っているかわからないアークではあるまいに。アークにとっては報酬よりも仕事が出来ることが第一なのだ。それでも報酬に拘るのは仕事への愛であり誇りだ。

「じゃあ、俺がとりあえずリーシェを呼んでくるよ」

 魔族であるサネシスとホクシアはどうあっても目立つが故に街中に入ることは拒んだ。
 白昼堂々と王城に魔族が現れればそれだけで大問題だ。

「お願いするわ」
「じゃあ、主以外みんなで待ってましょーか」

 ことを理解しているのか疑いたくなる言動だが、リアトリスの一言で、王城までいくのはアーク一人に決定した。ヒースリアも最初からそうするつもりであった。貴族の身分があるアークはまだしも、犯罪者であるヒースリアたちの身分がばれることは好ましくはないからだ。

 王城の前に立つと、以前目にした事がある門番がいた。相手が覚えているがわからないが、気さくに話しかける。

「なぁ、シェーリオル王子知らないか?」

 単刀直入過ぎる問いに、不審者と思われるか? と思わないでもないアークだったが、結論から言えばそんなことはなかった。門番は立った一度しか訪れていないアークの顔を覚えていたのだ。元々シェーリオルが誰かを連れて城に来ることが珍しいが故に、門番の印象も深かったのだ。

「シェーリオル様はエレテリカ様と街へ出ています」

 微動だにしない動きを貫きながら、門番はそう告げる。

「有難う、じゃ」

 街へふらりと出掛けるなよ悪態をつきながら、アークは街を奔走する羽目になった。王都というだけあって他の街ではない比の広さを誇っている。
 所々で、端正な顔立ちの金髪見なかったかと聞きこみをすると案外あっさりあちらこちらで目撃情報が集まった。王子かよと何度もその度に思ったものだ。
 中には王子だとしっかりばれていることもあった。程なくして――シェーリオルの目立つ容姿のお蔭で――見つけることが出来た。


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