零の旋律 | ナノ

執事酒癖


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 アークは騒がしい声の目ざましによって起床した。

「何があったんだよ」
「おはよう……えっとね、ヒースがお酒を飲んだみたいで今、お姉ちゃんと格闘しているの」

 階段を下りたアークがカトレアの返答に顔を顰める。アークは騒がしい元凶である部屋の扉を開けると、ハイリが隅っこで震えて、リアトリスはヒースと格闘していた。

「誰だよヒースに酒飲ませたのは!」

 開口一番アークが叫ぶと

「寝ぼけて牛乳と間違えて飲んだんですよ、この馬鹿ヒースは! しかも一気飲みですよ!? 何を考えているのか理解に苦しみます!」

 リアトリスが叫びながら返答する。その手には椅子が常備されていた。

「で、酔っぱらったヒースは何しでかしたんだ!」
「キス魔になりました!」
「はぁ!?」
「今、ヒースから必死に逃げているところです。気絶させたいところなんですが、ぬらりくらりと気持ち悪い動きで回避するので中々気絶させられないのですよ!」
「……マジでか」

 ヒースリア・ルミナスは酒に弱かった。それも少しでも飲むと簡単に酔っぱらって色々なことを仕出かすと言うハタ迷惑な体質であった。
 今回は牛乳と間違えて飲んだ挙句酔っぱらってキス魔になってしまったのだ。

「ですからキスをしてもらいたかったらヒースに近づくといいですよ」
「絶対御免だ! 何が悲しくて野郎と――しかもヒースとキスしなきゃなんねぇんだよ!」

 アークが叫んだ時、ヒースリアが襲いかかってきたので思わず椅子を武器にして振り回したらヒースリアは僅かに後退した。

「なんかゾンビ相手にしているみたいだぞ、これ!」
「ほんとですよね!」

 アークとリアトリスは共に椅子でヒースリアをけん制しながら近づかれないように距離をとっていた。
 やがて、酔いがさめたヒースリアは何一つ覚えていなかった。

「なんで椅子が壊れているんですか?」

 この時ばかりはリアトリスもアークと手を組んでヒースリアに壊れた椅子を投げ付けた。


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