零の旋律 | ナノ

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 アークが仕事でアルベルズ王国行きの船に乗っている頃合い。
 レインドフ家の屋敷内で残されたヒースリア、リアトリス、カトレアの三人は昼食をとりながら主のいない空間をまったり過ごしていた。昼食を用意したのはリアトリスだ。

「主って何処に行っているんでしたっけー?」
「アルベルズ王国ですよ」
「あぁ、あそこですかー。って放置しておいていいんですか? うっかりしたら主、三日三晩働いた挙句ぶっ倒れますよー? 他国で」
「……」

 リアトリスの最もな言葉にヒースリアは黙る。
 ヒースリアとてその可能性を考えなかったわけではない。
 隣国となると、移動時間も取られる。仕事を始めれば仕事以外何も目がいかなくなる主が、無事に帰国出来るとも限らない。
 だからこそ遠出する時はヒースリアが隣にいることが多かった。しかし、今回そのヒースリアはレインドフ家で昼食をとっている。

「リアトリス、私の代わりにアルベルズ王国で私の代わりに主を拾ってきてくれませんか?」

 私の代わりに、を繰り返し強調してヒースリアは自分がいかない意思を示す。

「主落し物みたいですねー」

 三日以内に仕事が終われば、倒れる事もないが、万が一の可能性をぬぐいきれない。この間は海賊に間抜けにも捕まっていたとヒースリアは愚痴を零す。

「落し物ですよ、でっかい。私は偶には屋敷でのんびり過ごしたいので」
「偶にって毎日のんびりじゃないですかー。んーでもアルベルズ王国にカトレアは連れて行きたくないですよ」

 カトレアは黙って会話の成りゆきを見ている。

「リアトリス一人で」
「ってかヒースがアルベルズ王国に行きたくないだけじゃないですか!」
「まぁそうなんですけど」

 アルベルズ王国に行きたくなかった、それが今回アーク一人で行かせた最たる理由だ。

「何でアルベルズ王国に行きたくないんですかー」
「会いたくない人がいるだけですよ」
「ヒースの我儘―。もー仕方ないなぁ。給料の為に主を拾いに行ってきますよー。そのかわり! カトレアに何かあったら承知しませんよ」
「大丈夫ですよ。レインドフ家に不埒な輩が侵入するわけもないし、このレインドフ家が何もないわけないじゃないですか」
「まぁそうなんですけもねー。カトレアに暫く会えないのが凄く凄く嫌です」

 昼食を食べ終えたリアトリスは立ちあがり、背後からカトレアを抱きしめる。

「片道三日の場所まで仕事に行くとか、全くいらぬ仕事中毒ですよね。じゃあ行ってきますよ」

 名残惜しそうにカトレアから離れる。

「ヒースが行けば、私はカトレアと一緒にいれたんですからね」
「偶には私の代わりに主を拾って下さいよ」
「……わかりましたよーだ」

 渋々承知したのち、メイド服から私服に着替えるために一旦自室に戻る。
 その後リアトリスはアークを追うべく港街シデアルへ向かう。


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