零の旋律 | ナノ

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 短剣が振るわれる。ノハは銃剣の刃部分で受け止める。そのまま短剣を弾き返し、至近距離から発砲する。アークの肩に着弾する。リアトリスが槍を振りおろしてくる。ノハは銃剣で流しながら、銃を発砲する。

「ちっ――」

 リアトリスは後退する。ノハの厄介な攻撃は銃剣を巧みに操ることだった。そして、ノハは接近戦を得意としているところだ。
 ノハが踏み込んで連撃を入れると、アークが背後に回って蹴りをかましてきたので、宙へ飛んで回避する。空中から銃弾を連射する。弾が切れたので、銃剣を振る。振ると空になったケースが落下し、ノハは腰につけているいくつものポーチの所へ両手を銃剣を持ったままいれ、すぐにあげて上へふる。それだけでリロードは完了だ。

「天かける焔の渦よ!」

 ノハは屋根へ着地すると同時に魔導を詠唱する。途端焔の渦が宙へ出現してそれが落下する。リアトリスとアークは素早く攻撃範囲からずれる。
 リアトリスは壁を蹴ってノハと同じ屋根に上る。屋根からは川が月日を浴びて反射して輝き流れている。

「リア、どうやって始末屋と手を組んだんだ?」
「どうやってだろうと関係ないと思うけど? どちらにしろ私が勝てなかった時点でカナリーグラスへはいられない。カトレアの安全が保障されないのだから」
「……そうだな」

 ノハは同意するより他なかった。何時までも勝者であり続けることは難しい。そもそもリアトリスが今までそれを実行し続けられた方が異常だと言われればそれまでなのだ。
 例え一度の失敗くらいでは今までの功績も考慮されリアトリス自身は無事だったとしても、リアトリスがした約束によって守られているカトレアは無事ではない。
 ノハの凶弾がリアトリスを襲う。始末屋との戦いで既に負傷しているリアトリスは交わしきれず身体に傷をつくる。
 アークも既に屋根の上に着地し背後から襲いかかってくる。
 屋根の上で続く攻防。アークが懐から取り出した無数の短刀を投げる。リアトリスが槍を振るう。全てを回避することは叶わなくて腕に短刀が突き刺さった。ノハは銃剣で両手がふさがっているが故、短刀を抜くことはせずに、発砲する。銃弾が尽きればすぐにリロードをした。近づいてくる相手には銃剣の剣の部分で対抗する。

「はははっ流石カナリーグラスのトップだ! 強くていいな!」

 楽しそうに刃を振るうアークを怪訝な目でノハは見ながらも確実に猛攻を交わす。しかしいかんせんいくらカナリーグラスでgTの地位についていようとも、gUのリアトリス、そして始末屋アーク・レインドフが相手では分が悪かった。徐々にノハは劣勢に立たされていく。体中から血を滴らせる。

「っとに……!」

 銃弾が襲いかかる。アークはそれを軽々と交わす。お返しとばかりにアークが拳銃を発砲する。ノハはそれを銃剣で弾く。

「舞え! 焔の――」

 魔石が輝きだした瞬間、リアトリスの花弁が魔石を砕く。

「ちっ――」

 不発に終わった魔導。ノハは距離置く。屋根から下手に足を踏み外せばそこは川だった。
 ――川……は困るな。
 ノハは呼びの魔石を取り出す。本来は銃剣による接近戦を好むノハだが、魔導が扱えないわけではなかった。扱えるが面白くないという理由で嫌うアークとは違う。


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